あなたは「良い独裁者」になれるか? これからの組織で必要な2大スキルとは

ビジネス

2018/7/6

『新・君主論 AI時代のビジネスリーダーの条件』(木谷哲夫/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

「独裁者」と聞いてどのようなイメージを持つだろう。何となく、周囲の意見を聞かない、暴力的などのマイナスイメージを思い浮かべないだろうか。私も間違いなく、そのひとりだ。

 だが、どうやらその認識は改めなくてはいけないらしい。というのも、「独裁者」とは絶対的な権力を行使する人のことを指す。つまり、現在政治や経済で期待されているような、人々を導くカリスマ性やリーダーシップに通ずるということだ。

 歴史の教科書に掲載されている人々を不幸に陥れてきた「悪い独裁者」ではなく、現代社会に新しく求められている周囲を引っ張り、導く力を持つカリスマ「良い独裁者」になろう。そう説くのが、『新・君主論 AI時代のビジネスリーダーの条件』(木谷哲夫/ディスカヴァー・トゥエンティワン)だ。本書では、良い独裁者・悪い独裁者の見分け方や、良い独裁者になる方法、そして悪い独裁者を組織から排除する方法が、さまざまな事例を用いて丁寧に説明されている。

■良い独裁者がいれば、毎日のランチにも困らない?

 独裁者の第一条件は絶対的な権力を持っていること。そうすると権力を巡る派閥間の争いが、どの組織でも発生する。このような争いを何となく毛嫌いしてしまいがちだが、本書ではあくまでも独裁のポジティブな面に注目し、権力を道具として用いることを奨励している。

 例えば、人がひとりでいればランチの行先を決めるのに大した時間はかからない。単純に好きなものを食べればいい。だが、人数が多くなると好きなものを安易に選ぶことができなくなる。10人、100人、1000人と人数が増えれば増えるほど、さまざまな人の利益・思惑が働き、ひとりのときのようにスピーディーに決断して行動することができない。

 この例がランチではなく、政治・企業の意思決定という場であれば、本来目指すべき目標にスピード感を持って取り組めず、資本主義社会において不利になり、組織が大きな不利益を被る可能性が出てくるだろう。つまり、人の顔色をうかがい、誰も損をしないように、と議論を重ねているだけではいけないということだ。

 このような権力のプラス面を認め、主体的に決断し、行動に移すことができる人物を本書では「パワーリーダー」と呼んでいる。また、読者が独裁力を発揮することができるパワーリーダーに近い考えなのかどうか、診断するページもあるので、ぜひ参考にしていただきたい。

■トップリーダーに求められる2大スキルとは?

 ところで、組織のトップに立つ人間に必要な能力とは何だろうか。人格やアイデアなど思い浮かぶかもしれないが、本書では「戦略立案」能力「権力行使」能力の2つが挙げられている。「戦略立案」に関しては、専門知識を持つ他の人間が行うことができるが、「権力行使」は権力者にのみ与えられたものだ。

 例えば、国内外の会社において、新リーダーとして外部から社長を招くことがある。すると、前職が金融会社の社長、新しい会社ではIT企業の社長に就任するなど、明らかに領域外の人間がトップになることもしばしばニュースで目にする。これは、その分野に関する「戦略立案」は度外視したうえで、「権力行使」の力を新しい社長に求めているということだ。逆に考えれば、スムーズに物事を決断し行動にまだ移せずにいる組織がそれだけ多いということになる。

「自分は先頭に立って、みんなを導くことはできない…」そう考える人もいるだろう。だが、本書はパワーリーダーになりたい、という人だけに向けられた書籍ではない。今後、組織で必要とされる人間はどのような人なのか、またそんな独裁者が現れた際に、自分はどのような立ち位置となって関わるのか、そういう自分の指針を考えるきっかけになる。それはこの本の読み方として、きっと正しいはずだ。

文=冴島友貴