吉川晃司が挑む、佇まいだけで見せる“武士の矜持”。浅田次郎原作のドラマ『黒書院の六兵衛』の見どころを、ひと足早く紹介!

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2018/7/20

 新政府軍の西郷隆盛と幕府の勝海舟。2人の談判によって戦火を免れることとなった江戸城の不戦開城。この史実をベースに、江戸城内での武士たちによる、“もうひとつの戦い”を描いた浅田次郎原作のドラマ『黒書院の六兵衛』が、7月22日よりWOWOWにてスタートする(第1話無料放送)。

 長らく続いた新政府軍と幕府による争いに終止符が打たれ、階級や地位が崩壊しつつあった江戸末期。しかし、渦中にいた武士たちの多くはいまだ肩書を誇示し、また、ある者は振り上げた刀を降ろせないでいた。そんなさなか、官軍側の下級藩士・加倉井隼人(上地雄輔)は、城を滞りなく開け渡すための検分の役目を命じられる。勝海舟(寺島進)らを味方に、問題なく終わるはずだったものの、城内にはテコでも動ことうしない厄介な旗本がひとり。その男こそが、この物語の主人公・的矢六兵衛(吉川晃司)である。

 この作品の魅力は、「はたして的矢六兵衛とは何者か――?」というところにある。なんせ、六兵衛はひと言もしゃべらない。ただ、城内に鎮座しているだけなのだ。六兵衛という名も、彼の服から読み取っただけで、実際に本人かどうかもわからない。つまり、何が目的で居座っているのかさえも謎に包まれているのだ。こうしたミステリー性が、江戸城開け渡し前夜の緊張感と相まって、アンバランスなコミカルさを醸し出している。

 また、その一方で、“座っているだけ”の六兵衛の圧倒的な存在感に、まわりの武士たちがたじろいでしまうのが面白い。それどころか、誰よりも武士らしい六兵衛の佇まいや所作に、加倉井をはじめ、多くの武士たちは感銘を受けてしまうのだ。

 六兵衛を演じた吉川さんは、ダ・ヴィンチ本誌8月号のインタビューで、こう話している。

「原作を読んだとき、僕も最初は彼が一体何者なのかをずっと考えてました。でも、この物語で大事なのは、『彼が誰であるか』や『何が目的か』ではなく、“武士とはなんたるか”を、彼が身をもってまわりの武士たちに伝えたことなんですよね」

 “時代の幕開け”とひと言でいっても、当然その変化に対応できず、取り残されそうになっている者たちもいる。そうした武士たちの心情や機微をも丁寧に描かれているところに、このドラマの奥深さがあるのだ。

 そして、もうひとつの見どころと言えるのが、六兵衛や加倉井たちの妻の存在だ。家族を想い、夫の身を案じる加倉井の妻(芦名星)に対し、六兵衛の妻(若村麻由美)は夫が殉じる覚悟で家を守っている。対照的な2人ではあるが、これも当時のそれぞれの家族の在り方なのだと考えさせられる。大きな時代のうねりを描く一方で、しっかりと描かれた市井の人々の生活。これぞまさに浅田次郎の真骨頂といえる。

 最後に吉川さんは、「当時を指して“激動の時代”といいますが、時代は常に流れているもの。現代だって同じだと言えます」と話す。「そうした変化し続ける潮流の中で、残していかなければいけない大事なものは何かを、ときには立ち止まって考える大切さをこの作品では描いてるんだと思います」(本誌8月号インタビューより)

 全6話を通して描かれる、武士の誇りと生き様――。しゃべらぬ六兵衛から、きっと多くの視聴者が、言葉では言い尽くせないほどの“大切な何か”を教えられるに違いない。

文=倉田モトキ

『連続ドラマW 黒書院の六兵衛』(全6話)
原作/浅田次郎(『黒書院の六兵衛』文春文庫刊) 監督/李闘士男 脚本/牧野圭祐 音楽/coba 出演/吉川晃司、上地雄輔、芦名 星、寺島 進、竹内 力、千葉哲也、波岡一喜、若村麻由美、伊武雅刀、田中 泯

※7月22日(日)より、WOWOWにて毎週日曜22:00~放送(※第1話無料放送)