小島慶子さんの疑問を『バカの壁』の養老先生が一刀両断! 漠然とした不安はどうしたらいい?

暮らし

2018/8/8

『歳を取るのも悪くない』(養老孟司、小島慶子/中央公論新社)

 人口が減少して少子高齢化。景気は先行き不透明。収入格差で貧困が拡大し、保育園の待機児童は増加していく。こんな環境で結婚して出産して育児なんてできるのだろうか。今の社会は漠然とした不安がどこまでも広がっている。

『歳を取るのも悪くない』(中央公論新社)は、元TBSアナウンサー・小島慶子がベストセラー『バカの壁』などで知られる解剖学者の養老孟司に率直な疑問をぶつける対談集だ。

 1972年生まれの小島は団塊ジュニア世代。番組制作会社のディレクターと結婚するが、夫が会社を退職したことを機にオーストラリアに移住する。夫が主夫となり、小島が日本とオーストラリアを往復し、テレビ出演、講演などをこなして家計を支えることとなる。「いい学校に入っていい会社に入って、稼ぎのいい男性を捕まえれば女は幸せになれる」と親に聞かされるも、バブルが崩壊して就職氷河期。教わった生き方が大人になって絵に描いた餅だったと知らされた世代である。

 一方、養老は1937年生まれ。小学校2年生で終戦を迎えて教科書に墨を塗られるという理不尽さを目の当たりにする。安保闘争や大学紛争を乗り越えて、解剖学の道に進む。1995年には定年前に東京大学を退官。現在は執筆活動に精を出し、解剖学や脳科学だけではなく、雑多な知識を交えながら社会現象を広く論じて多くの読者を得ている。

養老 子供を産んで育てる、というのは、本来、自然な行為であるはずでしょう。それなのに、損得や合理非合理を持ち出して、脳の中で理屈をつけてしまう。

養老 理解できなくて当たり前です。大人たるもの、相手がわからないということを大前提にして、じゃあ、どうしたら伝わるかと一生懸命考えるものですよ。

養老 いまいる環境の中できちんと生きていけば、自分一人で生きているわけじゃないことなんか、すぐわかるはずです。そうしたら、なんでもかんでも世の中のせいにして当たり散らすような年寄りにはならないですよ。

 養老の言葉は実に明快である。漠然な不安なんてものは、各自が勝手に頭の中で作り出した代物だ。

小島 子育ての悩みは尽きません。先生は保育園の理事もされていますが、そんな親たちにどんな言葉をかけますか。
養老 たった一言「体を使わせろ」ということだね。子どもは感覚から入るから体を動かさないと何も始まらないですよ。

 大人だってそうだ。体を動かさないと何も始まらない。目の前にあることを一生懸命に取り組んでいれば、不安なことなど忘れてしまうのだ。本書はそんな当たり前のことを気づかせてくれる1冊である。

文=梶原だもの