こっくりさんが上手なのはどんな人? 科学者が“超常現象”に本気で向き合う本

スポーツ・科学

2018/9/6

『「超常現象」を本気で科学する』(石川幹人/新潮社)

「説明のつかないような奇妙な体験」をしたことはあるだろうか。現実として、心霊や超能力といった「超常現象」は、非科学的なオカルトものとして一括りにされ、それを信じるか信じないかはその人の自由だという風に扱われている。

 だが、科学の未発達だった少し前の時代には、地動説は異端とされ、イナヅマは神の怒りだなどと考えるのが当たり前だった。そう考えてみると、今の時代の私たちが「説明のつかない力」だと思っているものも、いずれ科学的に説明が可能となるのかもしれない。

『「超常現象」を本気で科学する』(石川幹人/新潮社)はそのタイトルの通り、科学者である著者が、巷の超常現象を始終科学的な姿勢で解析していく書籍だ。著者は本書で、「これまでの超常現象に関する議論は不毛すぎた」と主張している。幽霊が「いる/いない」と対立するのではなく、幽霊体験を科学的世界に落とし込んで見つめていくことで、未知の科学的成果が挙げられる可能性は大いにあるという。

■「こっくりさんが上手」なのはどんな人?

 50音の文字を並べた紙の上に十円玉を置き、その上に3人がそれぞれの人差し指を乗せて、「こっくりさん、こっくりさん、お出ましください」と唱えると、こっくりさんが言葉を伝えてくれる。ここで大切なのが、「自分の指に力を込めてはならない」というルールだ。

 こっくりさんは「無意識のなせるわざ」と考えるのが妥当で、十円玉が動くのは、3人のうちの誰かが無意識的に指へ力を入れているからだと著者は説く。

誰かが意識的に指に力を入れたのだ、無意識に手が動くなどありえないと思っている方もあるでしょう。しかし、それが動くのです。(本書123頁)

 熟練した演奏家は、無意識に手が動いて楽器を奏でるという話はよく聞く。彼らの指は、無意識であるはずなのに、他の演奏家の音や観客のノリにも反応して調和を生み出す。演奏家でない私たちも、例えば歯磨きをするときに、歯ブラシを右に左に、縦に横にといった複雑な行為をほとんど無意識的に行っている。また、「手足を交互に出して歩く」という動作も無意識によるもので、それを意識しながら歩こうとすると、かえって上手く歩けなくなったりもする。

深層心理学では、無意識にも独自の意図や願望があると考えられています。夢の中が、それが表面化する格好の場であることは、すでに何度か述べました。こっくりさんは、そうしたもうひとつの場なのです。(本書123~124頁)

 また、「誰かの秘密を自分が語る」と自分に問題がふりかかってきてしまうが、「幽霊(こっくりさん)が語った」のであれば誰からもとがめられない、という「こっくりさん」ならではの都合の良さもこれに作用しているのだとか。

 以上の科学的な考察と彼の実体験を踏まえ、「こっくりさんが上手」とされる人は皆、無心にこっくりさんに取り組んでいる人なのだと著者は指摘する。彼らの意識はたんに、「幽霊の言葉」を受動的に期待しているだけであり、「何らかの演出をしてやろう」といった悪意は持っていないそうだ。

 本書では他にも、「幽霊が見えるときの脳内のメカニズム」「金縛りのメカニズム」「テレパシーは可能か」「米軍も透視の実用化を研究していた」などなど、興味深いトピックが多数紹介されている。

 本書を通して筆者は、超常現象は科学的に研究する価値のある分野なのだと学んだ。幽霊や超能力が「ある/ない」という、存在の可否だけを議論して対立するのではなく、適切な距離を置きながら熱心に研究することは大切であるようだ。

文=K(稲)