絶対泣ける、レビュアー大賞課題図書!“落語”に秘めた、彼女の真実は?

文芸・カルチャー

更新日:2018/9/19

『君の嘘と、やさしい死神』(青谷真未/ポプラ社)

「第3回読書メーター×ダ・ヴィンチ レビュアー大賞」の課題図書に選ばれた『君の嘘と、やさしい死神』(青谷真未/ポプラ社)は、「運命に抗おうとする」勝気な女の子と、「NO」と言えない弱気な男の子が出会い、文化祭での「落語披露」を目指す青春感涙物語である。

「レビュアー大賞」は、誰でも書評を投稿できるサイト「読書メーター」に投稿された感想の中から、ベストレビュアーを決定するコンテストだ(詳細はこちら)。応募は、9月1日(土)から。

 本作には、すでに多くの書評が寄せられているのでいくつか紹介しよう。

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うわ、ライトノベルかよ、と思いながら読み始め、彼女が病気で周りがおどおどするというお涙ちょうだい的な話なら、すぐ捨ててやるって思いながら読んでたはずなのに、いつのまにかモモと玲花の世界にどっぷりハマってた。僕の2018年の暫定ナンバーワン作品!読む本がないなら是非とも読んで欲しい! 落語聴いてみようかな。5点満点中4.9っす!(ゆう)

2回目読了 最初と違い、うるっとくる場所が異なりました。 時間の捉え方、やるべきことをすごくきっちりこなす彼女が、何故そのような行動をとるのか意味がわかってくるので、その分共感できるんでしょうね。(ぬりかべ)

過去のトラウマが原因で相手に対し「嫌だ」と言えなくなった男子高校生・モモと、人生を悔いなく生きるために自分の気持ちに正直にいる女子高生・美園。二人が出逢い、美園の計画に引きずり込まれるモモが、最後に得たものは何か。周りへの見当違いな気遣いで身を引き後悔するくらいなら、自分の気持ちに忠実でいた方がいい。まだ経験も少ない高校生が、相手の気持ちを全て理解するのは難しい。大きな代償があるからこそ悟れるのだろうか。全身全力で取り組む美園から感じることはとても多かった。(assam2005)

序盤からなんとなくざっくりとした展開は予想できたのだけれど、主人公の気の弱いところ、女の子のまっすぐなところ、それぞれの素直な気持ちがとても愛おしく感じて、だからこそ、ラストは何度も胸が苦しくなった。 必死で、純粋な彼らに、幸せになってもらいたかった。でも、きっと、わたしの望む形でなくても、彼女は幸せだったのかもしれないし、彼は幸せを見つけていけるだろう。(あふろ)

 さて、「レビュアー大賞」の課題図書には芥川賞を受賞した『コンビニ人間』や本屋大賞に選ばれ映画化も果たした『羊と鋼の森』など、錚々たるタイトルがナインナップされている。

 そんな中、候補作となった本作はライト文芸と呼べるかもしれない。

「ライトに読める」ので、読書をあまりしない方や10代でも手に取りやすい。もちろん、読書好きにとっても、二度読みしたくなるような伏線が張り巡らされている。手軽に読んで泣くのもよし。隅々まで読み込んで泣くのもよし。という(どちらにしても泣くのだけれど)、様々な読み方のできる一冊である。

 物語は、高校2年生の百瀬太郎(ももせ・たろう)、通称モモが、文化祭で行われる行事のプレテストとして、数少ない手掛かりから「携帯電話を持っていない、ある女子生徒を見つけられるか」というゲームに挑戦しているところから始まる。

 その女子高生の名前は、美園玲(みその・れい)。クールで勝気美人の彼女は、クラスメイトとは距離を置いているのに、なぜかモモはなつかれてしまう。玲に文化祭で体育館を使用して落語を披露したいから場所の確保をして、という無茶ブリをされたり、落語の練習にも付き合ってほしいと、半ば強引に協力させられることに。

 玲の落語はどう見ても初心者だ。なのに、なぜ落語? なぜ自分が手伝うことに? なぜ、それを練習期間に余裕のない文化祭で披露? なぜ、なぜ……。謎の多い彼女の言動に振り回されながらも、流されて、頼み事を聞いてしまうモモ。

 しかし、彼女との出会いを通して、モモは変わっていく。

 過去のトラウマから、頼み事に「嫌」が言えず、他人の苦労まで背負い込んでしまう彼だったが、毎日を「全力で生きる」玲と接する内に、少しずつ変化していくのだ。玲の前で、本気の「嫌だ」が言えた時、モモは長年の殻を破ることができる。だがそれは、モモにとって過酷な運命を目の当たりにする瞬間でもあった。

 文化祭直前の、高校生たちの淡い青春と、終盤にかけて明らかになる玲の真実。優しさと涙に溢れたこの恋愛小説を、見届けてほしい。

文=雨野裾