自分が嫌い、ちょっとしたことでヘコむ…「自己肯定感」が下がったときの上手な対処法

暮らし

公開日:2018/10/1

『自己肯定感がドーンと下がったとき読む本』(古宮昇/すばる舎)

 自己肯定感とは、簡単にいえば「自分を好きだ」と思える感覚のことだ。この自己肯定感は人間の幸福度に大きく関係しているといわれる。そのため、自己肯定感はどんな状況でもブレないことが大事だと思う人も多いだろう。しかし、本来自己肯定感とは褒められれば上がり、叱られれば下がるのが当たり前のものだ。そのため、より大事なのは自己肯定感が下がったときの対処となる。その対処を教えてくれるのが『自己肯定感がドーンと下がったとき読む本』(古宮昇/すばる舎)である。

 自己肯定感には、基本レベルがある。成功や失敗で上下はするものの、時間が経てばその基本レベルに戻る。自己肯定感が低い人というのは、この基本レベルが低いのだ。自己肯定感の基本レベルが高ければ、多少ショックなことがあっても「まあいいか」となりやすい。しかし、基本レベルが低いと周囲の出来事に過敏になってしまう。そのため、まずは自己肯定感の基本レベルを上げることが肝要だ。

 自己肯定感の基本レベルを上げるための方法はいくつもある。本書では13項目が挙げられているが、ここではそのうちの2つを紹介しよう。

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 まず1つ目は、自分の感情を認めて大切にすることである。悲しい気持ちや嫌な気持ちになったときに「こんなことを思ってはダメだ」と押し込めるのではなく、まずは「悲しいね」「嫉妬しているのね」など自分の気持ちを自分で受け入れるのだ。これが自分を好きになる第一歩となる。自分の本音を自分で認めて受け入れなければ、それらは心の奥底に溜まり、やがて爆発したり自分の心を歪めたりしてしまう。このとき大事なのは、ポジティブばかり求めず、ネガティブな気持ちも受け入れることだ。「ネガティブになってもいい」と思えるようになれば、自己肯定感の基本レベルが上がった証拠といえるだろう。

 2つ目は、自分の中の傷ついた子どもを癒すことだ。誰もが子ども時代を経験しているように、誰の心の中にも「大人の自分」と「子どもの自分」が居る。自分を責めたり、落ち込んだり、腹が立ったり、自分の事を嫌いだと思ったりしているとき、その苦しい感情は大人の自分ではなく心の中の子どもの自分が感じているのだ。こういった心の中の子どもの自分はインナーチャイルドと呼ばれることもある。このインナーチャイルドを癒すセラピー方法の基本は以下のとおりだ。

目を閉じて、深呼吸をしましょう。体の力を抜いてこころを落ち着かせます。
こころの目で、あなたのこころのなかにいる傷ついた子どもを見ます。
過去につらい経験をしていたときの自分自身です。
イメージが浮かびますから、その子に優しいまなざしを向けましょう。

 また、自分でセラピーを試みてもうまく効果を実感できない場合は、専門家(セラピスト)の力を借りるのも手だ。

 自己肯定感が高いと、いろいろな面で得をする。人間関係が楽になるし、気持ちがおだやかになり安定するから、余裕をもって人に優しくできるようになる。ここでいう「人」とは、他人だけではない。自分のことも入っている。自己肯定感が低い人は、常に自分に対して「ダメ出し」を行っているのだ。その最たるものが「自分を好きになると向上心がなくなり怠惰になってしまう」という思い込みである。この思い込みがあると、せっかく自己肯定感の基本レベルを上げようとしても「これではダメだ」とどこかでブレーキがかかってしまう。しかし、この思い込みは誤りである。人間は自分が本当に好きなことに関しては「もっとよくしたい」と思い、進んで努力しようとする。つまり、自分を好きになると、向上心がなくなるどころか、むしろその逆なのだ。

 自己肯定感を上げることと、怠惰になることは決してイコールではない。こういった思い込みを見つけて、ひとつひとつ解消していくことが自己肯定感の基本レベルを上げるうえで重要なのだ。

文=柚兎