発達障害あるあるな悩みがたくさん! 上司や同僚にも好かれる“ビジネスマナー”とは?

ビジネス

公開日:2018/12/3

『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が会社の人間関係で困らないための本』(對馬陽一郎:著、安尾真美:著、林 寧哲:監修/翔泳社)

 発達障害のある人の悩みは特性により多種多様だが、職場でのコミュニケーションが上手く取れずに困っている方は多い。「報連相が上手くできない」「同僚や上司とどうやって仲を深めていけばいいのか分からない」といった苦しさを抱えながら仕事に励んでいると、会社に行くこと自体が辛く感じられてしまう。

 ビジネスシーンでのコミュニケーション法やマナーは丁寧に教わることがほぼなく、状況によって臨機応変に対応していかなければならないことも多い。だが、それは発達障害の方にとっては難しく感じられることもあるという。

 しかし、『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が会社の人間関係で困らないための本』(對馬陽一郎:著、安尾真美:著、林 寧哲:監修/翔泳社)で、発達障害の人がぶつかりやすいビジネス上でのコミュニケーション法やマナーを学べたら、今よりも安心しながら仕事ができるようになる。

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 本書には発達障害の方が抱きやすいあるあるな悩み事に対して、発達障害支援の場で生み出された解決法が添えられているのが特徴だ。

 本稿では、具体的な悩みをいくつかピックアップしながら解決法をご紹介していきたい。

■指示待ちの作法で印象を良くしよう

 発達障害のひとつである注意欠陥・多動性障害(ADHD)のある人の中には、目の前の相手が話している途中で質問を挟んだり、自分の思い込みで仕事を進めてしまったりする方もいるが、それでは周囲から「態度が悪い」と感じられてしまい、ミスも生じやすくなる。

 そこで、こうした悩みを解決するには基本的な指示待ちの流れを覚えて、相手に受け入れられやすい態度を取れるようになっておいたほうがいいという。

 指示待ち中にメモを取るときは相手の机を台にせず、自分の手でメモを支えて書くこともポイント。そのため、メモ帳は片手で扱えるほどのサイズで、裏表紙が硬い台紙になっているものを選ぼう。

 また、相手に「話を聞いている」と思ってもらうにはメモだけでなく、相槌や返事のタイミングも重要になる。相槌や返事は相手が言葉を一旦区切って、視線を合わせ直してきたときや、少し言葉を強めに区切ったとき、「ね?」「いい?」と短く問いかけてきたときに返すと、話の腰を折らずに済む。慣れないうちはタイミングを覚えるため、テレビを使って、画面の向こう側にいる話し手に合わせながら相槌を練習してみるのもおすすめだ。

 人は自分の話をきちんと聞いてくれる相手には好感を持つものだからこそ、指示待ちの作法で自分の印象を変えていってほしい。

■報連相はシートを活用しよう

「報連相」は、ビジネスの基本。しかし、上司に仕事の進み具合を報告しようと思っても、どんな風に言えばいいのか悩んでしまったり、上手く伝えられなかったりすることもある。

 中でも、アスペルガー症候群(ASD)の方は全てを説明しようとしすぎて多弁や言葉不足になりやすく、ADHDの方は衝動性から思ったことをすぐ口にしてしまいやすいため、報連相が上手にできないと悩むことも多い。そんな特性と上手く付き合いながら実務を円滑に進めるには、「報連相」シートを作ってみよう。

 シートのフォーマットには要件や結論、理由、対策案が記載できるようにしておけば、要点を絞って報連相が行えるようになる。なお、報連相シートは会議の時にも活用させられるので、必要に応じて応用できそうだ。

■苦手な雑談では話さなくてもいい

 会社は仕事に精を出す場だが、同僚と上手く雑談できないと、孤立感で辛くなってしまう。雑談には明確なテーマがないからこそ、何を話したらいいのか考え込んでしまう方もいるかもしれないが、悩んだときはまず、相槌を打って同僚の話に耳を傾けることから始めてみるのもよい。

 たとえば、興味の幅が狭いという特性があるASDの方は参加できる会話が少なく、雑談に加わることが難しいと思っているかもしれないが、笑顔でうなずいているだけでも同僚との仲は深められる。その際は話し手のほうに顔を向け、聞き上手に徹してみよう。

 また、思ったことをそのまま口に出してしまうADHDの方は相槌を打ちながら、まず話の流れを掴んで、話せるタイミングを待とう。そして、タイミングが訪れたら一気に言いたいことをまくしたてないように注意。たとえば、相手が30秒話していたのであれば、自分も同じ時間だけ話すように心がけ、フェアな会話を意識してほしい。

 コミュニケーション法やマナーは場面や相手、キャラクターによっても変わってくるので正解が提示できない。だが、ビジネスシーンなら、ある程度「正解」の範囲を絞ることができるので、ぜひ本書を活用してみてほしい。口頭での会話が苦手な方は収録されている、読み上げアプリの使い方やITツールを使った解決策も参考にし、職場での生きづらさを解消してみてほしい。

文=古川諭香