枕営業も同伴も、ネコが「ホスト」になってもてなす! Twitterで話題のネコ漫画『ネコホスト』

マンガ

更新日:2019/1/18

『ネコホスト』(卯月よう/双葉社)

 どれだけ猫が好きだからといっても、一緒に暮らせるとは限らない。住んでいるマンションがペット禁止だったり、家族に猫アレルギーの人がいたり、生活費の問題だったり、いろんな理由で飼うことを断念している猫好きの人たちは多いはずだ。そして、そういう人たちにとって「少しでもいいから猫に触れたい」という欲求を満たしてくれるのが猫カフェだ。

 自由気ままな猫を撫でたり、逃げていくのを眺めながらお茶を飲む至福の時間。ただ、そのマイペースさが可愛いなと思う一方で、もっと近くにきてくれないかな、ともどかしくなることも多々ある。我々は家に帰っても猫がいないから、今このときをもっと濃密に過ごしたいのだ。

 卯月よう氏が描く漫画『ネコホスト』(双葉社)は、そんな猫との触れ合いに飢えている人々にとって、最高の萌えを提供してくれる作品だった。

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 作品の舞台は、街にこっそりと佇む、とある「ホストクラブ」。もしあなたが疲れ果て街を歩いているときに、店の看板を見つけることができたなら、すぐ隣の路地の階段の下にお店を見つけることができる。扉を開ければそこには「ネコホストクラブ」の世界が広がっているだろう。

 ホストのメンバーは、希少なオスの三毛猫で人気ナンバーワンのMIKE、毛並みがよくクールな黒猫KURO、純白の毛とオッドアイを持った美しい白猫HAKU、ヤンチャな性格のトラ猫LEO、の4匹だ。

 この作品の魅力は、ネコたちが完全に擬人化されているわけではなく、猫としての生態を多分に残しているところにある。決して彼らはお酒を飲まないし(お酒の代わりにカツオの出汁が用意されている)、お客さんの「タワー入れちゃう」は「シャンパンタワー」ではなく「キャットタワー」の方である。

 お客さん相手にもかまわず膝の上で寝たりするし、マイペースさは変わらない。ホストとしてもてなす部分はあるが、気ままな性格で翻弄したりもする。そして彼女たちはそれを求めている部分もあるのだ。

「枕営業」や「同伴」などといったホスト用語も、ネコホストの世界になると途端にほっこりとした風景になるからいい。枕営業はそのまま猫を枕に客が横たわるサービス(決して猫に体重はかけない)。同伴は客がカバンに猫を入れてお店まで歩くこと(街行く人には「散歩」だと思われている)。

 ときにはホストクラブらしいゴージャスな振る舞いをする客もいる。といってもお酒をボトルで入れることはできないから、ここではマグロを1匹丸ごと入れるのだ。その額ウン百万。これを入れれば立派な太客である。

 ホストとしての仕事をしながらも、ネコらしいマイペースさも忘れずにもっている「ネコホスト」たち。その塩梅が絶妙で、ネコでもなくホストでもなく、ネコホストが欲しくて悶えてしまう。単なる「ネコ萌え漫画」でもなく「ホスト擬人化漫画」でもない。そこには確かに「ネコホスト」という新しい世界観が確立されているのだ。

 私も疲れたらネコホストに癒されたい。読んだあと、ついお店を探して街中をキョロキョロと見回したくなる作品だ。

文=園田菜々