とまらない岡崎京子作品の映画化―― 20年経った今なお愛される理由とは?

マンガ・アニメ

2019/1/23

『チワワちゃん』(岡崎京子/KADOKAWA)

 2019年1月18日より、門脇麦、玉城ティナらが出演する『チワワちゃん』が全国公開されました。『チワワちゃん』のあらすじは以下の通り。

【クラブやセックス、ナイトプールなど、派手に遊んでいたグループのマスコット「チワワちゃん」がバラバラ死体となって東京湾で発見される。チワワちゃんの元彼や親友たちはそれぞれチワワちゃんの思い出を語り出すが、誰もチワワちゃんの本名を知らなかった。刹那的な時代を経て、コピーライターのユーコがチワワちゃんの素性を探る――。】

 さてこの作品、原作は、言わずとしれた伝説的漫画家・岡崎京子先生の同名漫画です。

 岡崎先生といえば、80年代~90年代を生きる若者たちの恋や友情を、残酷なまでに(ときには暴力やドラッグも用いて)リアルに描いた唯一無二の漫画家。発表された数々の作品は、30年近く経った今も色褪せることはなく、根強いファンに支持されて続けています。

 そんな岡崎先生の作品が映画化されるのは、2012年に公開した沢尻エリカ主演の『ヘルタースケルター』、そして2018年に公開した二階堂ふみと吉沢亮らが出演した『リバース・エッジ』に続き、『チワワちゃん』が3作目です。

 ところで筆者が初めて岡崎京子作品に触れたのは、高校2年生のときに見た『ヘルタースケルター』がきっかけでした。

 当時教室で流行っていたマンガは『君に届け』や『ちはやふる』など、きらきらした甘酸っぱい青春もの。しかし、映画館で見た『ヘルタースケルター』は、制服デートも、切ない三角関係も出てきません。美しさに魅了された人間が、転がるように落ちていく物語です。ハッピーエンドともいえない終わり方に、17歳だった筆者は、大変衝撃を受けたのでした。

 そして、当時すでに作品が世に出てから20年ほど経過していたにもかかわらず、古さよりも新しさを感じるストーリーだったことを覚えています。

『チワワちゃん』もまた、変化することのない普遍性を持つ作品です。原作の『チワワちゃん』は、短編集に収録されている作品で、34ページのごく短いストーリーです。

 友人がチワワちゃんの死後に語る彼女の姿は、どれもバラバラ。

「意外と家庭的だった」「エロビデオに出ていた」「金に困っていた」……チワワちゃんという女の子の像は、決して一つに結ばれません。

 しかし、周りに嘘をついていたわけではなく、そのどれもがチワワちゃんの本当の姿だったのです。

 手段がセックスだろうが暴力だろうが、誰かと繋がっていたい。退屈は何よりも悪。将来よりも明日の孤独のほうが、切実な恐怖だと感じる……。

 感傷的なシーンはどこにもないはずなのに、チワワちゃんが感じていた、寂しさや孤独が、読み手にダイレクトに伝わってきます。

「みんな退屈してるんだよ みんな何かに夢中になりたくて必死なんだよ そうしないと死んじゃいそうなんだよ」(原作『チワワちゃん』より抜粋)

 映画と原作のおおまかな流れは同じですが、映画ではユーコというファッション誌のライターと、カメラマン兼チワワちゃんの恋人だったサカタというオリジナルキャラクターが加わっています。

 時代背景は現代に置き変えられていますが、若者の抱える鬱屈や葛藤の本質は変わりません。SNSがあろうとなかろうと、誰かに認められたい、一緒にいたいと願う気持ちは、みんなが持っているものです。だからこそ、岡崎先生の作品が2019年の今も映画化され、支持され続けているのではないでしょうか。作品が発表された頃に生まれた俳優陣が演じる『チワワちゃん』は、どのような作品になっているのでしょうか。そして、今の若者たちはこの作品から何を得るのでしょう。社会人になった私も、今一度、岡崎京子ワールドに浸りたいと思います。

文=坂本七海(清談社)

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