江戸時代に提灯の代わりに使われていた発光生物はな~んだ? 発光するさまざまな生物たちが照らす未来

文芸・カルチャー

公開日:2021/6/26

「冷光」と見抜いたアリストテレスと、見誤ったアメリカ建国の父

 発光生物の研究における歴史の中では、古代ギリシアの哲学者であり科学の分野にも大きな業績を残したアリストテレス(紀元前384-322年)が、魚やキノコ、ホタルなどの観察を通して熱を発しない「冷光」であることを見抜いていたという。

 また、気体と圧力の関係を示すボイルの法則を見つけた化学者であり錬金術師でもあったボイル(1627-1691年)は、真空ポンプを用いて空気の無い状態に置いたホタルは光らないが、空気を送ると再び光り始める様子を観察し、発光には空気が必要なことを発見した。

 アメリカの建国の父にして、凧を用いた実験で雷の正体が電気であることを発見したフランクリン(1706-1790年)は、「光る海、燃える海」の現象を海中での砂の摩擦によって起こる物理現象の光と考えた。それは間違いだったわけだが、フランクリンは後年に自身の間違いを認めた論文を公表したというから、研究者としての誠実さがうかがえる。

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提灯の代わりに使われた発光生物とは?

 ルシフェリン・ルシフェラーゼ反応は、実は現代の生活においてすでに活用されているという。台所のまな板や包丁などが菌に汚染されていないかを調べたり、工場内の水に菌が混入したりしていないかを判定するのに使う器具は、発光量から菌の数を推定できるのだとか。

 また医療の分野では、ガンを光らせて見つける研究が行なわれており、現在は患者を検査のために手術して取り出した組織標本の確定診断に1時間以上かかっているが、実用化されればおよそ10分で診断可能となって、手術中に結果を見て次の対応をすることが期待できるという。

 本書によれば江戸時代の読み物「加越能三州奇談」には、提灯の代わりにツキヨダケという発光キノコを持って夜道を歩いたなんて記述があるそうで、意外なものが役に立つのだなと感心もした。そんな新たな視点に光を当ててもらった気がする。

文=清水銀嶺

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