甘いスイーツのような読後感! 原田マハ『スイート・ホーム』が待望の文庫化! 美しい街の洋菓子店が舞台の愛の物語

文芸・カルチャー

公開日:2022/4/19

スイート・ホーム
『スイート・ホーム』(原田マハ/ポプラ社)

 人気作家・原田マハ氏の手掛ける連作短編集『スイート・ホーム』(ポプラ社)が、2022年4月6日(水)に文庫化された。同作が描き出すのは、さまざまな愛の形や夢のような情景。甘いスイーツのような読後感によって、多くの人を魅了している。

 作品の舞台は、地元の人々に愛される小さな洋菓子店「スイート・ホーム」。そこを切り盛りするパティシエの父を持つ香田陽皆は、内気な性格の28歳。彼女の恋を描いた表題の短編に始まり、料理研究家とスイーツ男子との恋愛模様など、洋菓子店を取り巻く人々の物語が計4作収録されている。

 同作は阪急不動産の「阪急宝塚山手台」とコラボした書き下ろし小説。「スイート・ホーム」もそこに建つ架空の店として書かれており、街の描写や四季の移ろいが美しい文体で記されているのも見どころの一つだ。また、一般公募した家族や住まいにまつわるエピソードが脚色されて物語の中に落とし込まれており、ノンフィクションをベースにしている点が親近感を沸かせてくれる。

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 あたたかで平穏なストーリー展開は、物語に触れた人の心を癒してくれるはず。読者の間では、「気持ちの良い人々の気持ちの良い物語に“この街に引っ越したい”と思っちゃった本です」「四季折々の登場人物の描写の見事な絡み、そして胸の思い、生きているって本当に素晴らしい」「不幸な人が出ないので、最後まで安心して読めました」と太鼓判を押す声が上がっていた。

 著者の原田マハ氏は、キュレーターとしての側面も持つ異色の小説家。過去には伊藤忠商事、森ビル森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館などに勤務していた。キュレーターの経歴を活かした、アートをテーマにした作風が特徴で、「第1回日本ラブストーリー大賞」や「第25回山本周五郎賞」などを受賞。メディアミックスも多数行われており、『キネマの神様』『総理の夫』は映画化もされ話題となった。

 気苦労の多い昨今、ただただ甘い気持ちになれる、『スイート・ホーム』のような一服できる一冊を、ぜひ手元に置いてほしい。

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