家族が「うつ病」と診断されたら…まずは“知らない”ことによる恐怖や不安を和らげよう/家族が「うつ」になって、不安なときに読む本
公開日:2022/11/12
精神科や心療内科によって病名が変わる
「うつ病」と診断されたらショックだけれど、「自律神経失調症」だとそんなにショックではない。そんなことはありませんか?
じつは、精神科や心療内科の病名は変わることがよくあります。なぜ、そんなことが起こるのでしょうか?
先に説明した、医師や病院による見解の差以外にも、次の2つの理由があります。
1つめは、本人が不利益を被らないよう配慮した病名にする場合があるからです。
心の病気に対して、世の中の理解は進んできているものの、未だに偏見や誤解も少なくありません。また、職域によっては病名で勤務に制限がかかる場合もあります。
偏見から、職場復帰や社会生活が妨げられないよう、医師の配慮で、受け入れられやすい病名にすることがあるのです。
2つめは、状態像を病名とする場合があるからです。
心の病気の診察では、問診をもとに診断と治療を進めていきます。しかし、診察の時点できちんと把握できるのは、患者さんの「今の状態」だけであり、単純に1つの病名ではくくれないことが多いため、「抑うつ状態」といった状態像が診断書に書かれることも多いのです。
長期間の治療のなかで、少しずつ病態の本質が見えてくることが多く、治療経過で病名が変わることも少なくありません。
また、うつ状態が病名として表現されるとき、うつ病以外にも、大うつ症性障害、双極性障害、躁うつ病、適応障害、発達障害、認知症、統合失調症など、さまざまな病名がつく場合がありますが、基本的には治療方針や薬が変わるだけで、患者サイドとしての対応は変わりません。
このように、診断名は絶対的なものではないので、診断名で一喜一憂する必要はありません。
また、診断名に限らず、医師の言葉は患者さんや家族に大きな影響を与えることがよくあります。
ある患者さんとその家族は、医師から「患者さんがこの性格を直さなければ、うつ病は一生治らない」と言われ、とても大きなショックを受けていました。
しかし、現実には、その患者さんは私たちのサポートを受け、1年で社会復帰することができたのです。
先にも触れましたが、医師も人間です。能力や専門もバラバラです。それを前提として、セカンドオピニオンという方法があります。
いずれにしても、医師が言うことを盲目的に信じなくても良いのです。
<第5回に続く>