「隣の芝生は限りなくブルー?」有名人や肩書きに弱い人がかかっている、先入観マジック/君は誰と生きるか

暮らし

公開日:2022/11/17

ど根性ガエルのごとく

「理屈はわかります。でも普通は、すごい人に会ったらうれしいじゃないですか。それはなぜなんでしょうか?」

 納得する半面、ふつふつと湧いてくる正直な思いを聞いてみた。

「それはね、自分を低く見積もっているからだよ。有名人とか肩書きに弱い人、よく『大会社の社長や会長に会いました』って、会ったことを自慢している人がいるだろ?」

 

「います」

「そういう人は、しみじみ言うんだよ。『たかだか俺みたいな町工場の親父に、あんな大会社のエラい人が会ってくれた』って。これを謙遜で言うならまだいいよ。でもね、もし心の底から『たかだか』なんて言ってるとしたら、それは自分がその社長より下だと思っているからだよね。」

「普通はそう思うんじゃないでしょうか」

「それがもったいないんだよ。どうして『自分も立派な町工場をやってるんだ』って言わないんだろうな。町工場だって、お客さんやスタッフたちを幸せにして、それでこの国の幸せにも貢献しながら、どっこい生きてるんだよ」

 そうだ。少し古いが、ど根性ガエルのように、どっこい生きてるんだ。

 シャツの中じゃなくて、社会の中で。

「そう考えておけば、堂々と人と向き合える。有名人や肩書きに負けるんじゃない。自分のやってることに誇りを持つことが大切なんだよ。『相手もすごいけど、自分もすごい。同じ人間じゃないか』くらいの気持ちを持ってろよ。しっかりと自分の道を歩いている人だけが、その気概を持てるんだ」

「はい、その気持ちでいきます」

「若いんだからもっとつっぱれ。ヘコヘコ下から行くなよ。登って行って堂々と対で向き合うんだ」

「はい」

「なんてカッコいいこと言っちゃったけどな、正直言うと、大切な教え子の君が、卑屈に見える生き方をしてほしくないんだよ。俺の個人的な気持ちもかなり入った意見だけどな、まあ親心だと思って聞いてくれよ」

 僕の気持ちを軽くするために、さらっとフォローしてくれるこういう温かさに僕はどんどん惹き込まれていった。

 

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