「隣の芝生は限りなくブルー?」有名人や肩書きに弱い人がかかっている、先入観マジック/君は誰と生きるか
公開日:2022/11/17
マジックの種明かしを始めます
「でも実際、そうやって必要以上に自分を下げちゃう人って多いんだよな」
ちょっと休憩してお茶を飲んだあと、師匠がしみじみ言った。
「それも仕方ないことなのかもしれない。でも、もっと自信を持って生きてほしいよな。たくさんの人が、このマジックに尻込みさせられてるのを見るたびに、ほんとに悲しくなる」
「マジックなんですか?」
「そう。もっと言い方を選ばずに言えば、洗脳と言ってもいいくらいのマジックだよ。ほとんどの人が気づいていないけどね」
師匠は一息ついてから続けた。
「君は最初私と会ったときにどう感じた?」
「それは正直、尻込みしました。日本の納税王で、日本屈指のビジネス書のベストセラー作家の超有名人ですから」
「そうか。そう思ったか。最初にそういう肩書きがつくとね、どうしても人って自分を下に置いちゃうんだよ」
「これって悪いことなんでしょうか?」
「いや、そんなことはないよ。確かにそう思うことも仕方ないことかもしれない。でもね、人に対してそういう見方をする癖がつきすぎると、長い目でみると君が損をしちゃうんだよ」
その意味がよくわからなかった。
「ここは大切なことだから、よく想像しながら聞きなよ」
「はい、お願いします」
「例えばなんだけど、君のこれまでのつながりのなかで、ここ最近、有名になった人っているかい?」
多くはないが思い当たった。なぜなら全国で活躍している知り合いの経営者たちが、特集番組なんかでテレビに出たりすることが増えていた時期だったから。
「人って出会う順番で、その人に対する見方が変わるんだよ。知り合いがテレビに出るのと、テレビに出ている人と知り合いになるのは、感じ方が違う」
「どんな見方になるんでしょうか?」
「簡単に言うと、先入観が入る」
「先入観?」
「そう。つまりはテレビに出てるとか、本を書いた人だってことで生まれる『すごい人なんだ』っていう思い込みのことだよ。人はその先入観に支配されがちになる」
「なるほど、わかります」
「例えば君も、テレビで見てた人だったり、読んでいた本の著者が突然目の前に現れると、びっくりするよね」
「はい、それはしますね」
「でも、逆に知り合いで有名になった人と、久々に会っても驚かないよね」
「はい。それはもともと知り合いなので」
「そこなんだよ。出会ったあとにその人が有名になったとしても、それは君にとっては知り合いが有名になっただけであって、有名な○○さんではないんだよ」
言われてみるとそのとおりではあるが、この考え方は完全に盲点だった。