世界で戦うために必要なメンタリティーとは?/サッカー日本代表:浅野拓磨『考えるから速く走れる ジャガーのようなスピードで』

スポーツ・科学

公開日:2022/12/1

 2022年11月23日(水)日本中が歓喜に沸いた。FIFA ワールドカップの初戦、優勝候補の強豪・ドイツに2対1で逆転勝利した日本! FWの浅野拓磨選手がゴールを決めた瞬間、感動して涙した方も多いのではないでしょうか。

 今回は、今最も注目されてるサッカー日本代表:浅野拓磨選手の書籍『考えるから速く走れる ジャガーのようなスピードで』をご紹介します。

「誰よりも深く考えなければ、誰よりも速く走ることはできない」……。7人兄弟の3番目という大家族に生まれ、サンフレッチェ広島の10番からあっという間にプレミアリーグ・アーセナルに完全移籍した浅野拓磨選手。

“世界最速”とも評されるサッカー選手は、試合中にいったい、どんな景色を見ているのか? 海外でいま直面している悩み、そして、日本代表への強烈な思いとは――。

 浅野拓磨選手の思いが詰まった『考えるから速く走れる ジャガーのようなスピードで』を、ぜひご覧ください!

※本作品は浅野拓磨著の書籍『考えるから速く走れる ジャガーのようなスピードで』から一部抜粋・編集しました

最強のメンタルを求めて

世界で戦うために必要なメンタリティー

 選手として世界で戦うためのメンタリティーについては、ドイツに来てすぐ、日本で求められるものとの違いに驚かされました。

 シュトゥットガルト一年目の2016−17シーズン、ハネス・ヴォルフ監督には少しネガティブな意味で〝目をつけられている〟と感じていました。監督と選手の関係という意味ではよくあることかもしれませんが、選手に対する監督の評価が高い場合、選手のプレーに対する監督のリアクションはつねにポジティブです。たとえば自分では調子があまりよくないと思っていても、練習でやってしまうミスに対して「いいぞ! 続けろ!」と前向きな言葉が飛んでくる。

 反対に、選手に対する監督の評価が低い場合、監督のリアクションはつねにネガティブになる傾向があります。自分ではとても調子がいいと思っているのに、たった一つの小さなミスに対して「ヘイ! 集中しろ!」と怒られてしまう。

 ヴォルフ監督とぼくとの関係は、まさに後者のそれでした。

 その状況にプレッシャーを感じてしまったのか、ぼくは監督の目が届くところ〝だけ〟ミスをするようになりました。監督がこちらを見ていなければほとんどミスをしない。でも近くに来るたびに、視線を感じるたびに簡単なトラップミスやパスミスを繰り返してしまう。完全な悪循環です。

 監督と選手といってもお互いに人間だから、監督にとってイジりやすい性格の選手、扱いにくい性格の選手は必ずいます。つまり、ヴォルフ監督とぼくの関係の場合は、ぼくが監督にとってイジりやすい性格の選手に分類されてしまっただけのこと。よく怒られるからといって戦力として計算されないわけでもなく、試合に出られないわけでもなく、あとに引きずるような怒られ方をしたわけでもありません。それなのに、ぼくはその関係性をプレッシャーに感じ、ミスをするようになってしまった。

 もちろん、監督にとっての〝イジられキャラ〟はぼくだけではありません。でもぼくのように敏感に気にしている人は、少なくとも当時のチームにはいなかった。もはや民族的な気質の問題かもしれませんが、海外の人たちは監督と選手におけるそうした関係性にさえ、たぶん気づいていません。というか、誰に何をいわれてもまったく気にしない。監督に認められようとする気があるのかと疑ってしまうくらい、みんなが自分に自信をもっていて、自己主張するのが当たり前の世界です。つまり、全員がエゴイスト。

 彼らの姿を見て、ぼくは思いました。

 いまの自分はメンタルが弱すぎる。海外でプレーするなら、日本人の感覚では絶対に通用しない。このままでは戦えない。だから、自分が変わるしかない。エゴイストになるしかない。

<第2回に続く>

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