素朴だけど肉のうまみを存分に味わえる。豚肉を叩いて作る「ハンバーグ」レシピ/豚かたまり肉を買ってみました

暮らし

公開日:2023/4/22

 カレーやチャーハン、スパゲッティ…。そんな簡単なメニューから始まり、料理の楽しさに目覚めた人が次に手を出したくなるもの――。それが「かたまり肉」です!

豚かたまり肉を買ってみました』は、登録者数45万人超の大人気ユーチューバーCOCOCORO・こと大西哲也さんが料理好き男子に向けて書いたレシピ本。手をかけてかたまり肉のうまさをじっくり引き出す、至高のレシピを掲載しています。レシピの他にも覚えておきたい小ネタや料理の歴史などもご紹介。

 一度読めば、かたまり肉の魅力に惹きつけられること間違いなし! 男子のみならず料理好き女子にもおすすめの1冊です。

 子どもから大人まで大人気の「ハンバーグ」。ハンバーグといえば合いびき肉が一般的ですが、今回は豚の肉のみで作るレシピをご紹介! 素朴だけど一度食べたら病みつきになる味です。

※本作品は書籍『豚かたまり肉を買ってみました』(大西哲也/ワニブックス)から一部抜粋・編集しました

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豚かたまり肉を買ってみました
『豚かたまり肉を買ってみました』(大西哲也/ワニブックス)

豚かたまり肉を買ってみました

豚かたまり肉を買ってみました

 デンマークにフリカデラという料理があります。豚のひき肉をこねて焼いたもの、つまりハンバーグのようなもので、どこの家庭の食卓でも必ず出てくるという国民的メニューです。

 ハンバーグといえば合いびき肉が一般的ですが、こちらは豚のひき肉のみで作ります。西欧の料理というとフレンチに代表される豪華絢爛なものが頭に浮かびます。味や素材をどんどん足し算していくイメージでしょうか。最近ではそれをベースにして、食材本来の味を活かす、イノベーティブな料理も人気のようです。

 フリカデラは北欧の家庭料理らしく、ブルーベリーソースをかけたりと、味付けのバリエーションが豊富で、各家庭の味があるようですが、豚肉本来の味わいを楽しめる料理といえるでしょう。

 日本人にとってハンバーグほどおなじみで一般的な料理はありません。日本中どこでも食べられる料理ゆえ、それぞれが持つ理想型があるようです。ふわふわが好きな人、ジュワーと肉汁があふれるタイプが好きな人。

 正解はないということを前提にした上で、料理として魅力的だと思うのは、しっとりやわらかタイプより、しっかりと肉のうま味を堪能できるハンバーグだと思います。さらに、イメージとしては小さく刻んだステーキの集合体。肉のうまさとジューシーさを堪能できるハンバーグ、それは一つのごちそうの完成形といえます。

 使用するひき肉の部位を考えることも、とても大事です。こちらがハンバーグのおいしさの根幹になるからです。

 肉肉しさを出すためには、すね肉をつかうといいでしょう。私が主に使う肉は3種類。すね・バラ・ロース(もも)。すね肉は比較的食べ応えを感じられる部位で、さらにバラと赤身をブレンドすることで、食感と味の奥行きを出します。スーパーで買うと脂身が多いのですが、精肉店で購入すると、赤身の多い部分を選んでくれることも。赤身の多い3種類の肉をバランスよく混ぜましょう。

 お好みで豚トロのような脂の多い部分を入れると、若い人に満足していただけるかもしれませんね。脂身の部分はうま味になりますが、入れすぎないように。赤身のしっかりとした肉のうま味を堪能することを忘れないように。

 かたまり肉を使うと、どこの部位をどのバランスで使おうかコントロールできるのがいいですね。余ったお肉は、他の料理に活用してください。最初にかたまり肉を薄くスライスして、そのあとは細切りにして、包丁でひたすら叩きます。

 出刃などの厚みのある包丁を使うとやりやすいかもしれません。そもそも、硬い肉をやわらかく食べるために作られた料理。柔らかい肉、いい部位を使う必要はないんです。硬い肉をひたすら叩く行為こそ、ハンバーグの真髄かもしれません。

 しばらくするとだんだん小さくなってきますので、さらにたたき続けると数ミリ程度の大きさになります。

シンプルだけど大事な作業

 叩いた肉をボウルに移したら、塩を入れてこねます。力を入れてしっかりとこねる理由は、肉の結着力をうみ出すためです。

 肉は「アクチン」と「ミオシン」という2種類のタンパク質が集まって束になり筋肉の繊維を作り上げています。この2種類のタンパク質は食塩水に溶けやすいので、ひき肉に含まれている水分に塩が溶けて食塩水になり、溶け出したアクチンとミオシンが絡み合います。「粘りが出る」という状態です。

 肉同士がしっかり結びつかないと、焼いている途中でボロボロ崩れてしまいます。粗びきの肉を塩だけでつなぐという工程はとてもシンプルですが、とても大事な作業だということがわかりますよね。もちろん下味をつけるという目的もあります。

 ひき肉を塩で練る工程はハンバーグ作りにおいて欠かせないのですが、一つ問題があります。手でこねると肉の脂が溶けて、結着力が弱くなるんです。だから、手を冷やしておいて急いでこねるか、ヘラを使うといいでしょう。

 ハンバーグにはつなぎを入れます。「つなぎ」という素敵な名前を与えられるだけあって、肉をまとめる働きを求められているのですが、それ以外に肉汁を吸う役割もあります。

 二つにカットしたときに肉汁があふれる、ジューシーなハンバーグは、インスタ映えをよしとする風潮の負の側面な気がします。

 肉汁が出るというのは、つまりうま味があふれ(逃げ)出すこと。肉汁を出さず、うま味を閉じ込めるのが最適解だと思います。そのために必要なのが吸水性の高い食材。私はお麩を使用します。フードプロセッサーで細かくしたお麩をタネに入れると、つなぎの麩がうま味を含んだ肉汁を吸って、食べた時に「肉汁じゅわっ」の食感になります。

 ちなみに、パン粉を入れるのが一般的ですが、個人的な意見として、パンというのは本来うま味が強いものなのでハンバーグになった時に邪魔になると考えています。ハンバーグとしての価値を高めないと言ってもいいでしょう。おいしいものでも、たくさん入れたら喧嘩してしまい、食材本来の味が分かりにくくなります。

 このレシピは豚肉をおいしく食べるためにあります。うま味を追加しすぎるのは、「調理」ではなく、「調味」になってしまうのではないでしょうか。生パン粉を入れるレシピもありますが、それでしたらパン粉の方がいいでしょうし、高野豆腐でもいいでしょう。ちなみに、パルミジャーノレッジャーノなどの粉チーズを入れると深いうま味が追加されるのは間違いありませんが、今回は肉本来の味わいを邪魔しないシンプルなレシピをお勧めします。

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