『人魚姫』あらすじ紹介。海に身を投げた人魚姫のその後は!? 泡になって消えたのではなく、実は…

文芸・カルチャー

公開日:2023/7/25

人魚姫』という童話をご存じの方も多いでしょう。ディズニー映画「リトル・マーメイド」の原作です。心優しい人魚のお姫さまが、人間の王子に恋をするという内容の童話で、アンデルセンの代表作のひとつです。本稿ではアンデルセンの『人魚姫』について、作品の解説と登場人物、あらすじをご紹介します。

人魚姫

『人魚姫』の作品解説

『人魚姫』は、デンマークの童話作家であるH.C.アンデルセンによって1837年に発表された童話作品です。優しい心を持つ人魚が人間の王子に恋をしてしまうお話です。アンデルセンの失恋体験をもとに作られた作品であるとされています。

『人魚姫』はアンデルセンの代表作のひとつであり、アンデルセンの母国であるデンマークのコペンハーゲンには、人魚姫の像があることがよく知られています。

『人魚姫』の主な登場人物

人魚姫:人魚の姫。人魚の王と王妃の末の娘で、姉が5人いる。

おばあさま:人魚姫を育てた祖母(母君)。人魚姫に人間のことについて教える。

王子:人間の王子。人魚姫の恋の相手。

魔法使い:海に住む魔女。人魚姫の声と引き換えに、尻尾を人間の足に変える薬を渡す。

人魚姫の姉たち:人魚姫を救うために魔法使いに美しい髪の毛を差し出し、王子を刺すためのナイフを人魚姫に手渡す。

『人魚姫』のあらすじ​​

 海の底に人魚たちが暮らしていた。人魚姫は、妻に先立たれた人魚の王の娘であり、5人の姉がいる。姉たちは1歳ずつ年齢が異なり、15歳になると海の上へと昇ることが許されるのであった。やがて人魚姫も15歳になり、海の上へ昇る日がやってきた。

 海の上には一隻の船があり、そこに人間の王子がいた。人魚姫は王子に一目惚れするが、夜になって嵐となり、船は難破してしまい、王子は海の外に放り出されてしまった。人魚姫は意識のない王子を助け、岸辺に寝かせると少し離れて様子を見ていた。そこへ修道女がやってきて、王子を連れて行ったので、人魚姫は海の底に戻った。

 海の底に戻った人魚姫は、人間に興味を持って祖母に人間についてさまざまな質問をする。人間は異形の存在である人魚には恋心を抱かないだろう、と告げられると、人魚姫は海の魔法使いの力を借りるために魔法使いの家を訪れ、自分の美しい声と引き換えに人間の足を得られる薬を受け取る。薬を飲んだ人魚姫は人間の姿になるが、声は出せず、歩くとナイフでえぐられるような痛みが走るのであった。さらに、王子の愛を得られなければ、泡となって消えてしまうよ、と警告を受けた。

 人魚姫は、人間の姿で倒れているところを王子に保護され、やがて一緒に宮殿で暮らせるようになったが、声を失った人魚姫は、助けたときの出来事を伝えられなかった。それでも王子から寵愛を受けていたが、王子にお見合いの話が舞い込む。人魚姫に好意を抱いていた王子であるが、お見合いの相手は人魚姫にそっくりな女性であったので、王子はあのとき助けてくれた人と勘違いして婚姻を受け入れてしまった。

 悲しむ人魚姫のもとに、姉たちが現れる。姉たちは美しい髪の毛と引き換えに海の魔法使いから手に入れた、人魚に姿を戻すためのナイフを手渡す。これで王子を刺し、返り血を浴びることで人魚の姿に戻れるという。しかし人魚姫は王子を刺すことができず、ナイフを海に投げ捨て、海に身を投げる。

 人魚姫は泡となり、そのまま消えてしまうかと思われたが、死んでしまった実感がないまま体が空へと上がっていくので「どなたのところへ行くのでしょうか?」とたずねると「空気の娘たちのところへ!」という返事が返ってきた。人魚姫は死なずに、風の精になることができたのである。

『人魚姫』の教訓・感想​​

 悲しいけれど、一途な愛の物語です。人魚姫は泡になってしまいますが、その後風の精となって王子様を守り続けているのかもしれないと思える素敵なラストです。

<第19回に続く>

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