自分好みの料理を作ってくれる献身的な女性。彼女の正体とは？／3分間ミステリー 真実を知るのは誰？3⑮
文芸・カルチャー 公開日：2023/9/6
『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー 真実を知るのは誰？』（緑川聖司/ポプラ社）第15回【全16回】
1話2～3ページの短い物語を読み、その中の”かくされた意味”を考える『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー』シリーズ。物語を読み終わったら想像力を巡らせ、解説ページで答え合わせをするのがこのシリーズの楽しみ方！ 今回の連載ではシリーズのなかでも人気の4冊から、それぞれ4つの物語をご紹介します。やさしいものから大がかりなトリックが仕組まれたものまで、あなたは物語の真の意味にたどり着けるか？
好物
「ご飯ができたわよー」
台所からの声に、わたしはテレビを見るのをやめて、食卓についた。
今日も食卓には、わたしの好物ばかりが並んでいる。
最近、暑い日が続いているせいか、あまり食欲のないわたしのために、彼女がつくってくれたのだ。
彼女はわたしの好みをよくわかってくれている、本当に献身的な女性だった。
わたしはマナー通りに準備をすませると、まずはスープに手をのばした。
うす味が好きなわたし好みの味つけだ。
次に目の前のスプーンを手にとって、目の前のグラタンを一口食べたわたしは、
「ん？」
口の中に違和感をおぼえて、手を止めた。
グラタンをかきわけると、忌まわしい緑色が見える。
「これは……」
わたしは顔をゆがめた。
約束が違う。
わたしは激しい怒りにかられて、思わず声をあららげた。
「ママー、ほうれん草入ってたよー！」
