オー・ヘンリー『最後のひと葉』あらすじ紹介。酒に溺れた売れない画家が最期に描いた傑作とは?

文芸・カルチャー

公開日:2023/9/24

最後のひと葉』は、小学校、中学校の教材にもなったことのある小説で、オー・ヘンリーの作品のなかではもっとも知名度の高い作品といえるでしょう。肺炎にかかったひとりの画家が、生きる希望を取り戻すまでを描いた作品です。本稿では、『最後のひと葉』について、作品の解説と登場人物、あらすじをご紹介します。

最後のひと葉

『最後のひと葉』の作品解説

『最後のひと葉』はオー・ヘンリーが1905年に書いた短編小説です。重い肺炎を患った画家を主人公にしたお話で、主人公の「蔦(つた)の葉がすべて落ちたら、私も死んでしまう」というセリフを知っている方も多いかもしれません。

 日本では小学校や中学校の教科書に採用されたこともあり、日本においてはオー・ヘンリーの作品のなかでもっとも有名であるといえるでしょう。

『最後のひと葉』の主な登場人物

ジョンジー(ジョアンナ):画家。重い肺炎を患っている。

スー:画家。ジョンジーと共同のアトリエを持つ。

ベアマン:ジョンジーとスーが住むアパートの1階で暮らす老画家。

『最後のひと葉』のあらすじ​​

 ワシントン・スクエアの西にある芸術家たちが集まるアパートに、画家のジョンジーとスーが暮らしていた。ふたりは8番街の定食屋で出会い、食事の趣味がぴったり合うことで意気投合して、アパートの最上階(3階)に共同のアトリエを作り、貧しいながらも温かい共同生活を送っていた。

 11月のこと、肺炎が流行りだしてジョンジーも肺炎にかかってしまった。ジョンジーは自分の絵が描いてある鉄のベッドに横になったまま動けなくなってしまった。

 ある朝、医者がスーを廊下に呼んで告げるのだった。「助かる見込みは——そう、十に一つですな」「その見込みはあの子が『生きたい』と思うかどうかにかかっている。こんな風に葬儀屋の側につこうとしてたら、どんな薬でもばかばかしいものになってしまう」と。心身ともに疲れ切ってしまったジョンジーは生きる気力を失いつつあったのである。

 スーは雑誌小説の挿絵を描く仕事に取りかかったが、ジョンジーは、目を大きく開けて、窓の外の蔦の葉の数を逆順に数えていた。「なあに?」とスーがたずねると、ジョンジーは「葉っぱよ。蔦の葉っぱ。最後の一枚が散るとき、わたしも一緒に行くのよ」と言った。

 1階ではベアマンという老画家が住んでいた。彼は、口ではいつか傑作をものにするのだと言ってはいるが、絵筆はろくに取らず、酒ばかり飲んでいる人物であった。ベアマンに、ジョンジーのことをスーが話すと、「蔦が散るから死ぬなんて、ばかなこと考えている人がいるのか」と罵った。

 その日の夜、激しい雨風が一晩中吹き荒れていて、蔦の葉は最後の一枚になった。その次の日も同じような天気であったが、蔦の葉が散らずに残っているのを見て、ジョンジーは考えを改め、生きる希望を取り戻す。

 その葉はベアマンが雨風に打たれながら必死で描いた蔦の葉の絵であった。ジョンジーは奇跡的に肺炎が全快するが、同じく肺炎になったベアマンは2日後に死亡する。蔦の葉の最後の一葉の絵こそ、ベアマンがいつか描くと言っていた傑作なのであった。

<第94回に続く>

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