人類最初の殺人を描いた泣ける絵。父の膝の上で伸びるアベルの亡骸が綺麗すぎる…/つい人に話したくなる名画の雑学⑤

文芸・カルチャー

公開日:2023/12/18

つい人に話したくなる名画の雑学
1888年 油彩、キャンバス 2030×2520㎜ アルゼンチン国立美術館(アルゼンチン、ブエノスアイレス)

嘆き悲しむアダムとイブ
息子の死、犯人もまた息子で……

『最初の死別』

ウィリアム・ブーグロー
【フランス 1825~1905年】

人類最初の殺人はアダムとイブの息子たち

 旧約聖書のお話です。アダムとイブには、カインとアベルという子どもがいました。ある日カインは農作物を、アベルは子羊を神に捧げる事となりました。

 カインは考えます。「うーん、どの農作物を捧げものにしたらいいんだろ。とりあえず、神様にあげちゃっても生活に支障がないものを捧げものにしちゃうかぁw」。

 一方のアベルはこう考えました。「神様が1番喜んでくれそうな子羊を捧げよう!子羊を失うのは痛いけど神様のためだし」。

 神様はどちらの捧げものを選んだか?健康を考えると野菜と肉の両方を摂取するのがベターと思いますが、神様は子羊だけチョイス。カインはイマイチの捧げものをしたくせに逆ギレ。嫉妬に狂い、アベルを殺してしまいます。人類最初の殺人です。

 突然の息子の死、そして犯人もまた息子。アダムとイブはアベルの亡骸を前に嘆き悲しみます。この作品は、その悲しみの様子を描いているのです。

『オレステスの悔恨』(→p58)でも紹介しているブーグローはアカデミズム絵画の巨匠。父の膝に横たわるアベルは殺害されたにもかかわらず、ほぼ傷は有りません。肌の美しさをブーグローが重要視していたためと思われます。彼は残念ながら20世紀初頭に忘れられた画家となっていましたが、20世紀後半に再評価されました。

 ちなみにその後のカインですが、神様によって二度と農作物を作ることが出来なくなるという罰を与えられました。彼は一定の地に腰を据える事ができず、永遠に荒野をさまよいます。また、カインは人に憎まれ殺される可能性が高いため、神様は彼に呪いをかけました。それは「カインを殺すものはその7倍の復讐を受ける」というもの。神様はカインに呪いの証明として印を付けたと言いますが、どんな印かは誰にも分かりません。

<第6回に続く>

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