「怪・真夜中にチャイムが鳴る!?」学校新聞のトップ記事を見て、自閉症のアルクが一言/歩く。凸凹探偵チーム①

マンガ

公開日:2024/3/1

「あれ?理人ならここは『先生がタイマーセットをまちがえただけだろ』とか言うんじゃ」

「それはない」とぼく。

「へ?なんでじゃ?」

「この学校のチャイム、旧式だろ。いったんセットしたら、変更するのがめんどうなんだよ。だからさ、短縮授業の日なんかも、いつもどおりの時間にチャイムが鳴って、校内放送で訂正するんだ。たった1日のために、セット変更なんかしてられないってこと」

「へえ~~。理人。おまえって、いろんなことを知っているのぉ。じゃあ、なんで、夜中に鳴るんじゃろ」

「それは今のところ、わからない」

「今はわからんでも、いつかはわかるいうこと?」

 オヅがつっこんだそのとき、ぼくのとなりでアルクが言った。

「――――チャイムは、3月14日の放課後から、正しいです」

 オヅにいったというより、つぶやいたっていう感じだ。

「ん?なにアルク?『14日から正しい』って……それまでは時間が正しくなかったってことか?」

 ぼくがたしかめると、アルクは、こくりとうなずいた。

 

「1分、遅れてました」

 ふむ……。

 カシャ

 そのとき音がして振りむくと、オヅがスマートフォンでぼくたちの写真をとっていた。

「理人、腕をくんで考えこむポーズ、ぶち探偵っぽいで!」

「るせー勝手にとるな」

「我が新聞社は探偵を募集しとるんじゃ。オレが謎を探してくるから、それを解決する探偵がいるんだ、そしてオレが記事を書く!」

「知るか。それよりオヅ、通学路でスマホ使って、大丈夫なのかよ」

 オヅんちは、今年、校区外に新しく家を建てた。

 本当は転校しなきゃいけなかったけど「小学校生活もあと少しなのに」って言い分が通って、そのまま、この学校に通っている。

 お母さんの車で送迎してもらうために、連絡用のスマホを持つことを特別に許可されている。

けど、校内では使用禁止。

 登校したらすぐに、先生に預けることになっている。

「まだ、校門の中に入ってないんだから、いいじゃろ。新聞はパソコンで作るんじゃけど、スマホは校内じゃ使えんじゃろ。校内では、これで撮影するつもりよぉ」

 と、使い捨てカメラを見せてくれる。

「でも、これだと使い切ってからじゃないと現像するのがもったいないし、プリント代もかかるし、大きさ変えたりできないし、不便なんよのぉ。そのうち、先生に見つからんような、こまいデジカメ買おうと思っとるんじゃ。こづかいためて」

 ためいきをつきながらも、オヅは横を児童が通ると、シュピッと近づいて新聞をわたしている。

 文章力もあるし、カメラやパソコン、機械はなんでも得意。

 なのに、その能力もバイタリティも、勉強にはちっとも使わずに、授業中のいねむり率ナンバーワンなやつだ。

 ぼくとアルクは、オヅをほうって、先に教室にいくことにした。

 

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