ラブレターの差出人を捜して! 匿名のラブレターをもらった生徒たちに次々と不幸が/歩く。凸凹探偵チーム③

マンガ

公開日:2024/3/3

 次の休み時間、まずぼくたちが行ったのは、「依頼人」の桐野さんのところだ。

 桐野さんがもらったラブレターは、まだ預かってない。

「このラブレターの差出人、調べてくれるんでしょ?」

 桐野さんが言う。

 桐野美波さんは、くるっと上むいたまつげと、くちびるをつやつやさせた女の子だ。

「いや。これは先生にわたしたほうがいいよ」

「えっ、どうしてよ?」

 桐野さんが、不満そうに口をとがらせる。

 ぼくはまじめな顔で言った。

「ほかに、無記名ラブレターを受けとった3人がトラブルにあっているんだ。桐野さんになにかあったら困るだろ。先生にきちんと調べてもらったほうがいい」

 

「3人? 三田くんにも、なにかおきたの?」

「さっき体育の前に、ころんでケガしたんだ」

 桐野さん、自分以外に、3人がラブレターをもらってるって知っているのか。

 そして、さっきのミタはともかく喜多川くんと丸谷にトラブルがあったことも、知っている……。

 桐野さんが手わたしてきた封筒は、ピンク色だった。

 百均で売られているのを見たことがある。

 なかに入っている紙もピンク色だ。

 開くと、手書きではなく、パソコンで打った手紙だった。

 

   美波さんの大きな目が好きです。

   くちびるもキュートです。

   笑顔が素敵です。

   だれよりも美人だと思います。

   心もやさしくて最高です。   匿名より

 

 …………。

 なんじゃこりゃ。

 桐野さんがちょっと得意そうに言う。

「こんなにほめてもらったら、お礼の一言も言いたいでしょ。探偵なら、さがしてくれるわよね」

歩く。凸凹探偵チーム

 

 ぼくが手紙を封筒にもどそうとすると、ふわりとあまい香りがした。

 ……この香りは……、と手をとめると、

「キラキラの香りよ」

 と桐野さんが答えた。

「キラキラ?」

「ええ? まさか知らないの?」

 人気アイドルのキラキラは、男子より女子に人気のファッションリーダー的な存在で、キラキラがプロデュースしたファッションアイテムは、なんでもバカ売れ。

 

 特に、自分と同じ「キラキラ」と名付けたパフュームは、大人気で売り切れ状態。

 手に入らない……とのこと。

 桐野さんが熱く語ってくれた。

「ああ、あれか。うちの新聞に広告のせてくれた化粧品店のおばちゃんが言うてたやつじゃ。ドリームでは売り切れのパフュームが、うちにはまだあるって。けど、そんなに手に入らんもんなら、たくさんの人に使うてもろうたほうが楽しいから、この店で自由に使わせてあげるんじゃ、言うてたわ」

 女子たちは、ときどき店にいって、おばちゃんに手首にほんの少しかけてもらうらしい。

「キラキラ」の香りは、バラの香りに似ていて、その香りが消えるまで、ゴージャスな気分になれるそうだ。

「わからんのぉー。どうしてそがあな香りがついとるんじゃろ。この手紙って男子からじゃないんか?」

 オヅが首をかしげる。

「バラのパフュームを使うのが女子だけとはかぎらないだろ」

 

「まあ、そりゃそうじゃな」

「キラキラパフュームを手紙につけると願いがかなうって、有名なのよ。だからじゃない?あとの3人の手紙もこの匂いだったでしょ」

 桐野さんの言うとおりだった。

 3通の手紙も、あまく香った。

 だけど、手紙の内容は、桐野さんのとはぜんぜんちがう。

 あとの3人の手紙は、同じ文面だった。

 

   好きです。

   大好きです。

   あなたのこと、いつもかげから見ています。

   私がだれなのかわかるように、秘密の合図をおくるね。

   この手紙のことは、だれにもナイショだよ。

 

 桐野さんがもらった手紙より本気っぽく感じるけど、またもやパソコンで打った文字。

 

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