Mr.マリックが保険のおばちゃんに教わった「話し方」の奥義 /Mr.マリックの『超魔術の裏技術』②

ビジネス

2019/9/10

ハンドパワーの正体は「プレゼン力」だった!?
Mr.マリックが実演販売員時代から長年培ってきたコミュニケーションの裏技術をみっちり伝授。これを身につければ誰の心でも誘導できるようになる。
あなたの人間関係やビジネス、キャリアが激変すること間違いなし!

『超魔術の裏技術』(Mr.マリック/ワニブックス)

対話 告白 接客 に使える超魔術【1対1のコミュニケーション】

■話がうまい人とは?

 集客することに成功した私は、すぐに次の壁に直面しました。人が集まってくれたのはいいが、売れないのです。みんな実演が終わると、蜘蛛の子を散らしたように消えてしまうのです。

 どうすればいいのか? 私は分析を始めました。100人集めて1個も売れない日もあれば、30人しか集まらなくても5個売れる日もある。この違いは何か?

 100人が全員冷やかしであれば、ひとつも売れないのです。でも、買いたい人が10人集まれば、いくつか売れるんです。冷やかしなのか、少し買いたい気持ちがあるか。その違いを見極めることができるようになれば、結果が違ってくるのではないか。私は観察を始めました。

 まず、親子連れは難しいことがわかりました。子供が興味を持って「欲しい」と言っても親がダメだというパターンが圧倒的です。 若い人もダメです。遊びに来ているだけで、お金を持っていません。

 グループは1人が買う気になっても、必ず「やめておけよ」「本当に買うの?」と茶々を入れる人間が必ずいます。だから買いません。

 手ぶらの客もダメです。デパートに来ているのに何も買う気がないから手ぶらでいる。私の店でも買うわけがありません。

 人間観察の結果、祖父母と孫の組み合わせか、1人でショッピングに来ている手ぶらではない人が、狙い目であることがわかりました。

 ただ、そういうお客様ばかりではありません。そもそもデパートに来ている人たちは基本的に、手品に全く興味のない人ばかり。そんな人たちに数千円から数万円の手品グッズを売るのなんて、世界で一番難しい商売だ。そもそも無理な話なんだ……売り上げゼロの日が続き、追い込まれていきました。

 ある日。私は例によって、手品には全く興味のなさそうなおばちゃんを相手に、話しかけました。
「ちょっとひとつ手品を披露しますので、よろしければご覧になりませんか?」
「いいわよ。時間あるから」

 私は実演しました。
「面白いわね。孫にひとつ買っていくわ」
「え! 本当ですか⁉ ありがとうございます! やっとひとつ売れました……」
「なあに? 売れてないの?」
「はい。全然売れないんです。もうどうしたらいいか……」
「あなたねぇ……」
「はい?」
「あなたなんてまだいいわよ。売るものが目の前にあるんだから。私なんか形のないものを、うん千万で売らなきゃいけないのよ。こんなに難しいことはないのよ」
「どんなお仕事なんですか?」
「保険のおばちゃんよ」
「あぁ、なるほど」
「人は必ず死ぬでしょう。でも死ぬことで人を幸せにする方法がたったひとつあるの。それが保険。自分のためじゃなくて、大切な人のための商品なの。自分が死んじゃった後でも、大切な人が困らない。そこに尽きるの」
「たしかに」

 私は息を吞んで聞き入っていました。
「私はもちろん、あなたもいずれ死ぬわよね?」
「……そうですね」
「想像してみてよ。あなたが死んだらどうなる? あなたのために泣いてくれる人たちがいるはずよ。あなたはそんな人たちに何ができる? 何が残せる?」
「……いやぁ……困ったな。何もないですね」
「ふふふ。安心して。あなたに保険を売りつけようってわけじゃないの。あなたはいずれ必ず死ぬ、という未来を相手に想像させるのよ。そして相手に、奥さんや子供や孫の顔を想像させるの」
「想像……」
「イメージさせるのよ」
「ピンと来ない?」
「……はぁ、すみません」
「あなたが実演を上手にやるなんて、当たり前のことでしょ。あなた、マジシャンなんだから」
「はあ」
「大事なのは、あなたじゃなくて、私みたいな素人が手品をできるようになることでしょう?」
「はい、そうです」
「マジックのグッズを売ろうとするからダメなの。マジックという夢を売るのよ。イメージなの。その人がマジックを披露して、人を喜ばせている姿を、想像させてあげるの。たとえば一人のサラリーマンと話をするでしょう。忘年会が近々ある、という話を聞き出したら、その人が忘年会でマジックを披露して拍手喝さいを浴びている画を、その人に想像させてあげるのよ。想像ができたら絶対に買うから」

 私は雷に打たれたようなショックを受けました。ものすごく大切なことを教わりました。話す、というのはつまるところ、相手にイメージをさせる、ということ。

 つまり、話がうまい人というのは、イメージさせる力がある人のことなのです。その筆頭が落語家でしょう。ありありと画が浮かびます。

 保険のおばちゃんから“話すとは何か?”を教わった私は、徐々にお客様の心を掴み、売り上げを伸ばすことができるようになっていきました


【次回に続く!】