『週刊ツリメ』「コロナウイルスに感染した話」

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公開日:2020/9/4

週刊ツリメ

 この「週刊ツリメ」で度々コロナウイルス関連の話題は取り上げていた。それは自分がコロナ対策を怠らないためでもあった。

 しかし、毎日テレビやSNSで多くの新規感染者が報道され、日本の中でも感染者数が一番多い東京に住んでいるが、仕事で関わる人で感染したと報告を受けたことがない。だからコロナウイルスって本当に実在するの? と疑いを持ち始めていた。そんな疑問を持った矢先に自分がコロナウイルスに感染した。不幸中の不幸だった。これは馬鹿でも感染するようです。ただの風邪ではなかったよ。

 その日、突如39度の発熱が出た。平熱は36度前半。今まで周りの人と比べて体調を崩さない方で、悪くて38度前半の熱があったくらいしか記憶にない。他の症状として手足の痺れ、めまい、頭痛が激しくあったのを覚えている。立とうとすると立ち眩みがあり、普通じゃないと思いつつも寝れば治るだろうと、自分の自然治癒力を根拠は無いが信じて1時間ほど眠りについた。

 目が覚めて自分の容態が1時間前となんら変わってない事に気づいた。むしろ悪化しているのでは? と危惧をした。体温を測っても熱は下がっていない。これはただ事でないと思ったが、その時「これはコロナの症状?」と考え焦りと不安が僕に被さる様に襲い掛かった。心臓の鼓動がハッキリと聴こえてくる。そこから動揺が収まらない。落ち着いたのは入院して数日経った後だった。

 まずはコロナウイルスに感染している疑いがある際に連絡する窓口を調べた。頭部を締め付ける様な痛みがあり、スマホの画面を見続けるのもしんどかったが、なんとか探して窓口に電話を掛けた。僕は3人暮らしをしている。アバンティーズのメンバーではなく、僕達を裏でサポートしてくれる人達が2人いるのだ。彼らと同居をしており、その1人が車を出してくれて急いで病院へ向かった。

 病院に着いた。車から降りると外は蒸し暑い。熱もあるから余計にボーッとする。夜空を見上げると月は黒い雲に隠れて辺りはどんよりしていた。それは今の自分の心境を映しているかのようだった。面倒な事が起きたなと溜め息を吐きながら嫌々病院の中に入った。

 この時、時間帯は夜だったので人はあまり居なかった。下駄を履いて来たので歩く度に病院内でカランコロンと廊下に響き渡る。これには流石に同居人に「なんで下駄を履いて来たんだよ」と突っ込まれた。こんな緊急事態に下駄はふざけていると思われても仕方がない。しかしここで一つ読者に伝えておきたい事がある。ツリメは季節問わず雨が降ろうが寒かろうが下駄を履いて歩いています。昔、浅草で運命の出会いをして愛用しているのだ。吐き慣れるまで足の皮が捲れて痛い思いをするが、段々と下駄が心を開いてくれて足と馴染んでくるのだ。そうなれば歩くのが楽しくなるんだ。かといって病院に音のなる靴はミスチョイスだった。

 下駄の音を響き渡らせながら廊下を歩き、自動ドアを通ってさらに奥の診察室に入った。そこには防護服を着た看護師さんが立っていた。室内を見渡すとパソコンにはサランラップの様な物で養生してある。至る所にそういった感染対策が施されている。看護師さんに誘導をされ、タンカーの上で体を横にした。再度、熱を測ったが下がっていない。色々と事情を話していると青の服を着た先生が部屋に入って来た。僕は「熱中症かと思いますが、どうですかねぇ?」と尋ねると先生が「とりあえずコロナの検査をしましょうかね」と言った。その時の僕は心の中で最悪のケースは避けてくれと祈るしか出来る事はなかった。

 先生は密閉された袋から長い綿棒を取り出した。それを鼻に入れて鼻咽頭の奥の粘膜を数回擦り、綿棒の先端に付着した液を検査する。それでコロナに感染しているかを調べるらしい。すぐに終わる検査なのだが、これが涙が出るほど痛いのだ。現代の若者が使う言葉で表すとぴえんだ。鼻の中に唐辛子を入られている気分だ。

 検査結果は30分から1時間で分かるらしいので、空き時間で肺の検査と血液検査をした。レントゲン室に向かう途中、看護師さんに「下駄を履いているなんて珍しいですね」とクスッと微笑みながら言われた。恥ずかしさと心身の辛さでどうにかなりそうだった。

 検査を終えて診察室に戻って来た。タンカーの上で寝て、熱を下げる為に点滴をして検査の結果を待った。こんなに待ち時間を嫌と思った事は一度もない。実は点滴が初めてだったのだ。針を刺し続けているのが怖くて気が狂いそうだ。まだディズニーランドでアトラクションを6時間待ち続ける方が楽だ。

 診察室の天井を見続けていると別の部屋から複数人で話している声が微かに聞こえた。ただハッキリとは何を話しているかは分からない。とりあえず検査結果が出たのだろうとは察した。それと同時に未来の事を想像してしまった。「陽性か陰性どっちかな?」と。こんなにドキドキが収まらないのは好きな人に告白するとき以来だ。YESかNoの知らせを待った時もこんな時だったなぁ、思い返したがその時と今では現状が異なりすぎて、この心臓の脈が速くなっているのは命に関わる事だと感じて動揺しているのだと気付いた。

 数分後、先生が僕の所に来て切ない表情でこう述べた。

 「検査結果は陽性でした」

 まさに晴天の霹靂の知らせは僕の胸を強く締め付けた。

 続く

執筆者プロフィール
ツリメ(byアバンティーズ)
埼玉県出身、年齢は23歳。チャンネル登録者数160万人超の人気グループ「アバンティーズ」のメンバー。
絵心はないがイラストを描くのが趣味で、メンバーからは「画伯」と呼ばれている。
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