怒りを成長に変える冨岡義勇の言葉。ネガティブな感情が剣士の道へと導くきっかけに/『鬼滅の刃』の折れない心をつくる言葉 ②

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更新日:2020/12/23

「鬼滅の刃」がヒットした理由は、自分の弱さと向き合い、葛藤し、それでも立ち上がろうとするキャラクターたちの“折れない心”にあるのではないでしょうか。そんなキャラクターたちが放った“言葉の力”に注目した1冊から、『鬼滅の刃』で生まれた名言をご紹介します。

「鬼滅の刃」の折れない心をつくる言葉
『「鬼滅の刃」の折れない心をつくる言葉』(藤寺郁光/あさ出版)

「鬼滅の刃」の折れない心をつくる言葉

 炭売りの炭治郎が町に炭を売りに行き翌朝家に帰ると、家族は鬼の鬼舞辻無惨に襲われ、倒れていました。炭治郎の妹・禰豆子の体にはまだ温かみがのこっていたため、炭治郎は一縷の望みをかけて禰豆子を背負い、医者のもとへ向かいます。ところが、その途中で意識を取り戻した禰豆子は、鬼となって炭治郎に襲いかかりました。そのとき、鬼となった禰豆子を斬るために現れたのが冨岡義勇でした。鬼の撲滅を目指す義勇は、妹をかばう炭治郎に無情な言葉で詰め寄ります。これはそのときの義勇の心の声です。

 

「喜・怒・哀・楽」のどの感情も、人を動かす力を持っています。

 誰でも楽しいことがあれば心が躍ってうずうずしたり、楽しさを前にしてそわそわしたりしてしまうでしょう。

 なかでも、人を動かす力が強いのは、「怒り」や「哀しみ」といったネガティブな感情ではないでしょうか。

 

 アメリカの社会神経学者ジョン・カシオポ氏は、「人間はポジティブな経験よりもネガティブな経験のほうが細かく覚えており、ポジティブな刺激よりも、ネガティブな刺激のほうが強く反応する」という「ネガティビティ・バイアス」を導き出しています。

『鬼滅の刃』でも、登場人物の過去は、ほとんどの場合にネガティビティ・バイアスの経験が描かれ、ネガティブな感情をともなう出来事が剣士の道へと導くきっかけとなっています。

 最初は「哀しみ」だったものが「憎悪」や「復讐」へと変わり、やがて正義感になって自分を鍛錬へと向かわせる……。

 過去の記憶や感情を呼びさまし、くじけそうになりながらも、自分の使命をはたすために立ち上がり続けた者だけが、「柱」(「鬼殺隊」で最高位に立つ剣士)へと近づくことができるのです。

 

 私たちはネガティブな感情を悪いものととらえ、封じ込めてしまいがちですが、実はそれは逆効果です。

 ネガティブな感情ほど強いエネルギーがあるので、抑え込めば抑え込むほど苦しくなってしまいます。

 大切なのは、ネガティブな感情の正体に気づき、その感情を、自分を成長させるために使うことです。

 

 あなたは自分のネガティブな感情を心の奥底にしまい込み、感じないふりをしていませんか。

 原動力である感情を無視しているのだとしたら、1度立ち止まって静かに自分と向き合ってみてください。

 自分の感情をきちんと感じ切るところから、すべては始まります。

 そして、どんな感情であれ、原動力となる感情はしっかりと、すぐに取り出せるところにしまっておいてください。

 もし、あなたが自分の大切な感情を忘れているのを炭治郎が見つけたら、きっとこう言ってくれるでしょう。

「こらえろ 頑張ってくれ。鬼なんかになるな しっかりするんだ。頑張れ。頑張れ!!」と。

<第3回に続く>

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