お金とはどういうもの? 今、君の財布に入っているお金には“理由”がある/14歳の自分に伝えたい「お金の話」②

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公開日:2021/7/1

藤野英人著『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』から厳選して全11回連載でお届けします。今回は第2回です。「僕らのお金の使い方」が“社会の未来”を左右する――。稀代の投資家が「14歳の自分」に伝えたくなった、お金に使われず、お金で苦労しないための「考え方」とは? 一生役立つ「お金の話」が詰まった、老いも若きも必読の一冊です。

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14歳の自分に伝えたい「お金の話」
『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』(藤野英人/マガジンハウス)

お金は〝過去と未来の缶詰〞

 さあさっそく、14歳の君に向けて、お金の話を始めましょう。

 まずは「お金とは何なのか?」というところから考えてみたいと思います。

 

 あらためて考えてみると、お金は僕たちにとってとても身近な存在です。でも、社会の教科書には、「貨幣とは何か」は載っているのに、「お金とは何か」は載っていない。だから、テストに出ることもない。

 正直に告白すると、お金の仕事をしている僕にも、ズバリ短い一言で説明できる答えはまだ見つかっていません。お金はそれくらい複雑で奥深いもの。

 ただし、お金が僕たちにどんなことをしてくれるのか、その役割や影響については他の大人よりも知っているし、研究をしてきたつもりです。

 

「お金とはどういうものか」を考えたときに、僕の頭に思い浮かぶイメージは〝缶詰〞です。表に「過去」というラベルが貼ってある缶詰です。

 

 お金というものは、自然と財布の中で増えるものではありません。植木鉢に水をやるとジャラジャラとお金が成ったり、鶏が産んだ卵の中に入っているわけでもない。そう、「お金がある」ということには必ず理由がある。

 君のお父さんやお母さんが仕事をして稼いだお金から分けてもらったお小遣いなのか、君のお手伝いによる成果なのか、誰かがプレゼントしてくれたものなのか。そこにあるお金は、必ず誰かの営みやつながりによって生まれたものです。

 とにかく君の財布に入っているお金には、ここまでやってきた理由がある。

 

 つまり、お金とは「過去の営み」が詰まった缶詰。

 見た目は同じでも、パカッと開けると中身はみんな違う。君の財布に入っている千円札と友達の財布に入っている千円札では、ここまでやってきた理由が違うんです。全部お小遣いという理由が1種類の中身の缶詰もあれば、いろんな理由が詰まったミックス缶もあるでしょう。

 だから、今の君が持っているお金は、君がこれまで生きてきた営みの証し。努力や環境、人間関係、全部の結果があって引き寄せたもの。そういう意味で、お金は持ち主が歩んできた過去のすべてを表しているものなんですね。君の財布の中には、14年間生きてきた積み重ねがあると言っていい。もちろん、お金がその人のすべてを説明するわけではないけれど。

 

 ここで、缶詰をクルッと回転させてみます。すると裏面には別のラベルが貼ってあります。ラベルには「未来」と書かれています。

 そう、お金は「過去の缶詰」であるのと同時に、「未来の缶詰」でもあるのです。

 今手元にあるお金を使って、部活に必要な道具を買ったり、観たい映画を観に行ったり、アイドルのグッズを買ったり、コンビニでお菓子を買ったり、本を買ったり。僕たちは新しいものや体験を手に入れることができます。これらはすべて「未来への選択」。つまり、「お金を使って何をするか」という選択が、君の未来を形づくっていくのです。

 お金とは、過去を表し、未来を創るもの。過去と未来のつなぎ目にお金がある。そう考えると、とてもドラマチックな魔法を僕たちは手にしているように思えませんか。

<第3回に続く>

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