自分のコンプレックスになっている性格をわが子に見たとき、親は子どもの「強み」をどう受け入れる?

出産・子育て

公開日:2021/7/10

問題行動に「強み」があらわれることも

 自分らしい強みを発揮したら周りを困らせてしまった、というケースがあります。たとえば、「ユーモア」の強みが過剰に出すぎて、「ふざけすぎ!」と怒られてしまったり、「つつしみ深さ・謙虚さ」を使いすぎて自分の意見を引っ込めてしまい、「意見がないの?」と責められたり、といったケースです。このようなとき、子どもたちは自分らしさを否定されたように感じてしまいます。しかし、自分らしい強みを発揮したことが問題ではなく、その発揮のしかたに問題があるということです。

 

 以前、オルタナティブスクールに勤務していたころ、リーダーシップの強みを持っている子がいました。ある日、何かのプロジェクトを進めるにあたり、その子はみんなを引っぱっていこうとがんばって指示を出したのですが、周りの子は「命令されているみたいで嫌だ」と感じてしまったことがありました。

 こんなときには、周りの大人はその子にネガティブなレッテルを貼るのではなく、「この子はリーダーシップという強みを持っているけれど、それを使いすぎてしまっている」と考えてください。強みは自然と発揮できるがゆえに、使いすぎてしまうことも多く見られるものです。

 

 ここでの声かけとしては「あなたの強みのリーダーシップでみんなをいつも引っぱってくれてありがとう。あのときも助かったよ。でも、今回の状況ではみんなにたくさん指示をして、みんなは嫌がっているみたいだけど、なんでだと思う?」と本人の気持ちや行動の意図を聞き出すことが大切です。そのうえで「リーダーシップとは、引っぱることだけではなく、みんなの気持ちを考えて見守ることでもあるよ」と、別の発揮のしかたを伝えることも役立ちます。その子の持つ強みはそのまま大切にしつつ、状況に応じてどれくらい、どのように強みを出すのかは、経験を通して学ぶ必要があるのです。

 子どもたちはこうした体験を通したり、適切な声かけをされたりすることで、強みの上手な発揮のしかたを覚えていくものです。

 

強みが発揮できないとき

 強みの使いすぎ(オーバーユース)の逆で、発揮できない(アンダーユース)こともよくあります。この場合、発揮できていない強み自体を育てることもできますし、別の強みを活用することで、解決に導けることもあります。

 たとえば、小学校3年生のえまちゃんは、動物が大好きで生き物係をしたいと思っていました。しかし、勇気が出せずに、最後は手をあげられなかったといいます。そんなとき「生き物係ができたらとても楽しい」という「希望」という強みを発揮して、手をあげることができたそうです。「勇気」という強みが出せなかったかわりに、「希望」という別の強みを発揮することで、問題解決に結びついた、というわけです。24の強みは、強弱はあれど、誰もが持っていて、育てることもできます。特定の強みが発揮できずにいるときは、別の強みを活用したり、発揮できない強みを育てる活動をしたりすることで、どんな強みも育てて使うことができるようになります。

 

自己肯定感が低い子どもには「隠れた強み」を伝えよう

 私はこれまでに、通常学級から適応指導教室まで、さまざまな環境、心の状態にある子どもたちへレジリエンス教育を行ってきました。

 なかには、自分に自信を持てなくて、「あなたの強みはここだよ」と伝えても、なかなか受け入れることができない子もいました。そのような場合には、「実はあなたが嫌だなとマイナスに感じているものの中にも、強みは隠れているよ」と伝えることが話を進めるきっかけとなることがあります。

 

 たとえば、怒りっぽく、頑固な人は、裏を返せば情熱的で正義感が強いともいえます。自信がないという人は、裏を返せば素直に意見が聞けたり自分を見る力があるともいえます。心配性の人は、慎重で気配りができて、先を見通す力があるともいえます。

 

 自分に対してネガティブな感情を持っている子どもには、「短所と感じるところも見方を変えるとよい側面がある」ということを伝えてあげてください。それを根気よく繰り返すことで、自分の「強み」を受け止めることができるようになるでしょう。

 

 また、中高生の場合は、自分らしさを出したときに否定された経験があると、スムーズに発見できないことがあります。強みが埋もれてしまっていることが多くあるからです。埋もれている強みを、ぜひ一緒に掘り起こしてみてください。

<続きは本書でお楽しみください>


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