“不完全な自分”を少しずつ許せるきっかけになった、ある日の出来事/がんばらないことをがんばるって決めた。

暮らし

公開日:2022/2/8

 ついついがんばりすぎてしまい、自分のことをおろそかにしていませんか? ストレスの多い現代社会を、もっと楽に生きたいと思う人は多いのではないでしょうか。

「今日も会社に行けなかった。まあいいか。生きてるし。」

 今回ご紹介するのは、そんな等身大のつぶやきで「いいね」を15万以上獲得した、考えるOLさんの『がんばらないことをがんばるって決めた。』です。

 考えるOLさんの共感を呼んだ投稿と、書き下ろしエピソードを満載したエッセイは、優しい言葉とエピソードが詰まった、がんばりすぎてしまうすべての人の心に響く1冊です。疲れている人ほど本書『がんばらないことをがんばるって決めた。』を手に取ってみてください。

※本作品は著:考えるOL、イラスト:おさつの『がんばらないことをがんばるって決めた。』から一部抜粋・編集しました。

がんばらないことをがんばるって決めた。
『がんばらないことをがんばるって決めた。』(考えるOL:著、おさつ:イラスト/KADOKAWA)

がんばらないことをがんばるって決めた。

大人だからこそ、しっかりサボっていこう

 ある朝、会社に行くのが超絶いやになった。

 家を出る時間をとっくに過ぎているのに、寝間着のまま、毛布にくるまっていた。仕事がまじで始まる5分前、「本日、体調不良のためお休みいただきます」と最後の力を振り絞り、親指だけでメッセージを送った。社会人になって初めて、仮病を使って会社をサボった日になった。

 唐突に空白になった1日。やりたいこともなく、天井をぼーっと眺めることしかできなかった。休日も仕事のことばかり考えていた私は、いま何をしたいのかさえ、わからなくなっていることに気が付いて悲しくなった。

 そして、翌日も会社に行くことができなかった。

 2日目のサボりを迎えてようやく街に繰り出した。目的もなく、ふらりふらりと近所を散歩していると、ゲームセンターを見つけた。子どもの頃に抱いていた「大人になったらUFOキャッチャーを思う存分やるぞ」という小さな夢を思い出した。淡い記憶とともに、ゲームセンターに吸い込まれていった。

 あのドラえもんのぬいぐるみがほしい。大した理由もなく、ひたすらに100円玉を機械に投入してクレーンを動かす。そして36回目にして、ようやくヤツをゲットした。小さくガッツポーズ。久しぶりの「夢中」な時間だった。

 次の日、自然と会社に行く気になれた。2日ぶりの職場は、何ひとつ変わらず、ちゃんと私の席もある。私がいてもいなくても、この世界はちっとも変わりはしないことを思い知る。さみしさよりも、安心のほうが大きかった。

 

「なんか今日つらいな。休もう。」そんなとき、あのドラえもんと目が合う。会社をサボって彼を夢中でゲットした日のことを思い出してはこうつぶやく。

「今日も会社に行けなかった。まあいいか、生きてるし。」

 無責任な考え方だと思っていたけれど、自分の人生に対する最大限の責任と敬意と誇りに満ちた、社会人として立派なマインドだと今では思う。

 もともと真面目で責任感が強い性格だった。凡人だからこそ、当たり前のことをきちんとこなす真面目さと責任感でしか、自分を守ることができなかった。

 社会人になってからも、平凡な自分を守るために必死だった。お客さんに迷惑をかけてはダメだ、上司や先輩に迷惑をかけてはダメだ。そうやって、いつも周りを気にしているふりして、ただ自分を守りたかっただけだった。その独りよがりな真面目さと責任感は、あやうく自分の息さえも止めるところだった。

 就活生のころ、「自分の代わりがいない仕事に責任感とやりがいを感じている」と言っている社会人がキラキラと輝いて見えた。憧れたりもした。

 それでも、自分の代わりがいくらでもいるということは、自分が苦しいときにはいつでも誰かが助けてくれるということでもあるし、自分も誰かの代わりにいつでもなれるということだ。

 それに、結局は自分も守れなければ、もっと周りに迷惑をかけてしまう。

 平凡な私も、失敗した私も、少しずつ許せる私になってから、生きることに穏やかさを取り戻せた。走ることを止めたのではない、少しでも遠くに辿り着くために、ゆっくり歩きながら進むことにした。そして、不完全な自分を許すことは、不完全な誰かを許せることでもある。

 社会は甘くないからこそ、一人ですべてを背負う強さが必要なのではなく、足りないことはお互いに許しあい、足し合っていけばいいよね。

がんばらないことをがんばるって決めた。

<第3回に続く>


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