思わず「幸せ」とつぶやいてしまう、私が一番くつろげる時間/がんばらないことをがんばるって決めた。

暮らし

公開日:2022/2/11

 ついついがんばりすぎてしまい、自分のことをおろそかにしていませんか? ストレスの多い現代社会を、もっと楽に生きたいと思う人は多いのではないでしょうか。

「今日も会社に行けなかった。まあいいか。生きてるし。」

 今回ご紹介するのは、そんな等身大のつぶやきで「いいね」を15万以上獲得した、考えるOLさんの『がんばらないことをがんばるって決めた。』です。

 考えるOLさんの共感を呼んだ投稿と、書き下ろしエピソードを満載したエッセイは、優しい言葉とエピソードが詰まった、がんばりすぎてしまうすべての人の心に響く1冊です。疲れている人ほど本書『がんばらないことをがんばるって決めた。』を手に取ってみてください。

※本作品は著:考えるOL、イラスト:おさつの『がんばらないことをがんばるって決めた。』から一部抜粋・編集しました。

がんばらないことをがんばるって決めた。
『がんばらないことをがんばるって決めた。』(考えるOL:著、おさつ:イラスト/KADOKAWA)

がんばらないことをがんばるって決めた。

唐揚げが食べたいってだけで、今日も生きる

 高層ビルに囲まれ、やけに狭く感じる東京の空の下。

 シワのひとつもないブラウスに、レースのタイトスカート。少し大きめのジャケットを肩にかけ、腕に小さなバッグをぶら下げる。ゆるく巻いた茶髪をふわっと揺らす。ヒールをカツカツならして、右手にはスタバのアイスラテ。

 オフィスにつくと、デパコスだけで仕上げた顔面でつくり出す、全力のさわやかな笑顔で「おはようございます」とあいさつをする。

 私が大学生のときに想像していたOL(朝バージョン)姿だ。

 世間知らずで無知だった考えるJDは、東京を生きるキャリアウーマンになるつもりだった。それはきらびやかな日常の主人公になることであり、誰もが憧れるキラキラなOLになりたかった。

 …というより、そうならなければいけない気がしていたというのが本音だ。

 私は東京から少し離れたところの、団地で生まれ育った。決して裕福な家庭ではない。だからこそ、大学に行くという選択肢があることが当たり前ではないことを、自分でよくわかっていた。

 就活生になる頃には、遊ぶ時間や友達、多額のお金を犠牲にしてきたのだから、何が何でも「他人より良い生活」=「誰もが憧れる生活」をしなければ今までの努力を無駄にしてしまうという「呪い」にかかってしまっていた。

 しかし、現実はとても厳しい。

 OLになった私のリアルは、思い描いていた東京のOL像と1mmすらかぶっていない。出勤する日は全身ユニクロにフラットパンプス。髪の毛は邪魔なのでひとつに束ねる。PCや資料が収まるどデカいリュックを担いで、古びたビルに入っていく。プチプラコスメで固めた顔面はすでにドロドロ。右手に持っているのは、夜な夜な仕込んだ麦茶を詰めた水筒だ。それは出社というよりも、もはや登山に近い心境だった(登山したことないけど)。

 相変わらず東京から少し離れた場所で、毎日くたびれた朝を迎えてはただ忙しなく1日をやり過ごす。疲れるたびに、あの呪いが私を苦しめた。

〝私のこれまでの努力、ちゃんと回収できてる?〟

 自分にそう問いかけたのは、客先から帰る電車の中だった。東京から離れていく景色をぼんやり眺めながら、憧れから遠のく自分の人生と重ねてしまう。

 しかし、その問いかけに答える前に、騒がしい景色から移りゆく、のびやかな景色に疲れがほぐれ、気づかぬうちにすやすやと眠ってしまっていた。

 最寄り駅で目が覚める。夜空の下を歩き、スーパーの明かりに吸い込まれていた。大好物の唐揚げが半額だった。今晩は唐揚げとレモンサワーに決めた。

 帰宅をすると、中学時代から愛用しているジャージに着替える。ゴムも緩み洗濯で生地はくたくた。千鳥の番組を見ながら、唐揚げとレモンサワーを口いっぱいにほおばるこの時間。ありきたりで、誰に伝えたくなるでもない、私が一番くつろげる平穏な時間。幸せだーと思わずつぶやいてしまう。

 この一瞬で、あの呪いから解放された。仕事帰りに唐揚げをほおばることを幸せに思う大人になれたなら、努力の回収に成功しているに決まってる。

 誰かに自慢できるようなキラキラOLにはなれなかった。それでも、また仕事帰りに唐揚げが食べたい。たったそれだけの理由で、今日を生きていいんだ。

がんばらないことをがんばるって決めた。

<続きは本書でお楽しみください>


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