SAKIKO「私が愛するK-HIPHOPの名曲」/私たちのK-POP偏愛プレイリスト⑩

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更新日:2022/4/19

K-POPに足を踏み入れると、触れる機会が増える“K-HIPHOP”。その扉を開けば、より深く韓国の音楽シーンを楽しむことができるはずです。K-POPを愛する著名人に「ごく私的なおすすめ5曲」を教えてもらうプレイリスト連載、第10回のゲストは韓国カルチャーに詳しいクリエイティブ・ディレクターのSAKIKO(鳥居咲子)さん。長年K-HIPHOPのキュレーターとして活動していた経験もあるSAKIKOさんが選んだ、とっておきの5曲とは。

Vol.10 SAKIKO「私が愛するK-HIPHOPの名曲」

こんなHIPHOPもあるのだと知ってほしい!

「私が韓国の音楽にハマったきっかけは、BIGBANGのT.O.Pのソロ曲『Turn It Up』です。当時私はストイックな洋楽ファンで、音楽性みたいなことにしか興味がなかったのですが、この曲はちゃんとHIPHOPとしてかっこいい曲でありながら、アイドルならではのエンタメ要素がたくさん詰まっていて、ダンスやMVなどどれも“ショー”として魅せる楽しさがありました。その後、GD&T.O.Pのアルバム『THE FIRST ALBUM』を聴いたことで、さらにその世界にのめり込んでいきます。今回は、私が愛するK-HIPHOPの名曲を5曲選びました。“ラッパーだから○○”“HIPHOPは○○であるべき”がなく、ときに文学的で、ときに芸術的なK-HIPHOP。こんなHIPHOPもあるのだと、たくさんの人に知ってほしいです」

※Spotify内にある「ダ・ヴィンチ」チャンネルでは本連載で紹介した曲を聴くことができます。

▶Play

 

1:Airbag/TABLO feat.Naul

※オフィシャル(音源のみ)

※番組出演時ステージ動画 「ユ・ヒヨルのスケッチブック/20170826」

EPIK HIGHのTABLOが2011年に発表した初のソロアルバム『熱花』収録曲。

「TABLOの溢れる文学性に感銘を受けた曲。出だしのあまりにも繊細な描写に、まるで自分もタクシーに乗って、その光景を見ているかのような錯覚に。最初は、ボソボソっとつぶやくようにラップをしているのですが、曲が進むにつれ音が追加され、感情も強くなっていく。曲を聴き終わったころには、感情が大きく揺さぶられていることに気がつきます。とにかく歌詞が素晴らしい、個人的にとても大切な曲です」

2:Back In Time/E SENS

2015年に発売されたE SENSの初のソロアルバム『The Anecdote』収録曲。

「E SENSもまたTABLO同様、ストーリーテリングのスキルがずば抜けて高いラッパーです。TABLOは抽象的な表現を多用した文学的な歌詞を得意としますが、E SENSの書く詞は真実性の強いストーリーを盛り込んだ自伝的な内容。『Back In Time』も、これまでの自身の歩みを振り返った曲です。歌詞には“偽物のエアフォースワン”や“カセットからはキム・ゴンモ”など、懐かしさを感じさせるフレーズもたくさん出てきます。彼の体験したストーリーが直接的に感じられる歌詞も好きですが、彼の声とラップするときのトーン、声を吐き出すときに感じる滑舌の強さも好き。ずっと声を聴いていたいです。ほかにも『독(毒/Poison)』という曲もおすすめです」

3:CHALLAN/BewhY

2019年に発表した2ndアルバム『The Movie Star』収録曲。

「どんなに高速でも正確に聞き取れるラップ、最初から最後まで変則的に変わるビート、芸術性の高いMVなど、BewhYが作るものはすべてがオリジナルでハイクオリティ。大手事務所に所属しているわけではなく、インディペンデントでこれらを成し遂げてきたのもすごいです。先日BMSGに所属している15歳のラッパー・edhiii boiにこの曲を聴かせたところ、大興奮していました」

4:Infrared Camera/Wonstein

HIPHOPサバイバル番組『SHOW ME THE MONEY 9』(M-net)内で披露された楽曲。

「神秘的な声、優しい音楽、彼の作り出す世界は温かさで溢れています。SMTM9で披露されたこの曲で、叙情的な歌詞、唯一無二のラップスキル、ステージを作るテクニックなど、彼がもつアート性が十分に発揮されたと思います。トータルで芸術家だなという感じがします」

5:Bittersweet (Feat. ron)/Kid Milli, dress

ラッパーのKid Milliとプロデューサーのdressのコラボアルバム『Cliché』収録曲。

「Kid Milliは自分の見せ方がとても上手です。ファッション、表情、ラップスタイル、どれをとっても新しく、いわゆる“~っぽい”というのがない。Kid Milliが登場した当時、ラッパーになりたい若い子たちがこぞってKid Milliを真似したのはよくわかります。この曲は昨年発表されたdressとのコラボアルバムに収録されている曲。楽曲も実験的で新しく、FeatのRONの声もとてもかっこいいです」

〈プロフィール〉
鳥居咲子(とりいさきこ)
「BMSG」クリエイティブ・ディレクター。幼少期よりピアノと音楽理論を学ぶ。イギリス・ロンドンに音楽留学後、外資系コンサルティング会社に就職するも、趣味が高じて韓国ヒップホップのキュレーターとして活動を始める。来日イベント、ライブ制作、MV撮影などのコーディネートやディレクションのほか、情報サイト「BLOOMINT MUSIC」を運営するなど多岐にわたり活躍したのち、2020年SKY-HIが設立した「BMSG」に合流。オーディション番組「THE FIRST」の企画・制作にも携わった。現在は、クリエイティブ・ディレクターとして、ダンス&ボーカルユニット「BE:FIRST」のプロデュースや若手育成にも力を入れている。また、韓国でベストセラーとなった、韓国ヒップホップグループEPIK HIGHのリーダーTABLOのメッセージ集『BLONOTE』の邦訳版(世界文化社)では解説を担当した。

<第11回につづく>

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