働き方が多様化している今だからこそ考える「フリーランス」という仕事

ビジネス

2018/3/2

『フリーランスで生きるということ』(川井龍介/筑摩書房)

 いったん企業に就職すれば老後まで安泰な時代は、わたしたちに「さよなら」も言わずにいつの間にかどこかへ行ってしまった。終身雇用という枠組みに対する意識が薄くなっている時代を生きるには、先達よりも「働き方」を意識しなければならなくなっている。企業に就職するのか、自分自身で会社を立ち上げるのか、会社や個人と契約を結んでフリーランスとして働くのか…。

 ここでは、近年徐々に知られつつある「フリーランス」としての働き方の全体を見渡している書籍『フリーランスで生きるということ』(川井龍介/筑摩書房)の話をしようと思う。

■「自由」と「不安・孤独」が表裏一体のフリーランス

 フリーランスというと、自由気ままな働き方と生活スタイルを思い浮かべる人も少なくないだろう。しかし、「自由」とはいっても、何もかもが自分の思い通りになるわけではない。この点に関して著者は、サラ=パレツキーのハードボイルド小説『バーニング・シーズン』の中の「自分のボスは自分」という言葉を借りて、フリーランスにおける「自由」を言い表している。

 この言葉の表さんとすることは、生活の中に仕事をどう位置付けるかを決める権限が基本的に自分にある、ということだ。つまり、自宅とは別に仕事場をもつのか、生活リズムや経済計画をどう設計するのか、どういう仕事のオファーを受けていくのか、ということを自分自身で決めることができる「自由」がフリーランスにはあるのだ。

 そして、著者はこの「自由」の裏側には常に不安と孤独がつきまとうとも説いている。さきほど触れたように、フリーランスは仕事に関することをすべて自分で決めなければならない。選択・決定・決断には大小さまざまなものがあるが、特に大きな決断については、自分自身に委ねるのが怖くなるのである。本書ではこのような観点から、フリーランスの仕事で「自由」を手にするためには、それ相応の覚悟が必要だということが見えてくると述べられている。

■フリーランスでやっていくために意識しなければならないこと

 わたしが学生時代に出会った恩師は、「働く」というのは「傍(はた)を楽(らく)にすることだ」と言っていた。これは、フリーランスに限らず、どの働き方にも当てはまることだ。では、フリーランスという働き方は、どのようにして「傍を楽に」しているのだろうか。これについて本書に即して考えてみよう。

 本書では、フリーランスは社会に空いた穴をふさぐ働き方だと述べられている。企業の手の届かない範囲の仕事を、企業に代わってこなしていくということだろう。本書の著者は、フリーランスとして働くときには、「自分がやりたいことは何か」を考えるのではなく、「どうすれば社会の役に立てるか」という意識をもつことが大切だと説いている。社会に空いた穴をふさぐという点を意識すれば、フリーランスは会社勤めをすることよりも強く、社会の役に立っているという実感が得られるかもしれない。

 フリーランスとして働くうえで、税金や社会保障などの「制度」、どういった仕事が向いているかという「職種」についても正しく理解しておかねばならない。「自由」「働き方」「制度」「職種」など考えなければならないことがたくさんあるのがフリーランスだ。これらすべてを網羅した本書は、フリーランスとして生きていこうか悩んでいる方には虎の巻となるに違いない。そしてまた、本書は会社勤めの方にとっては、フリーランスで働くビジネスパートナーのことを正しく理解する一助となるだろう。

文=ムラカミ ハヤト