人類の50%は失業!? AIがもたらす経済の行き過ぎた均衡とその未来を防ぐ方法を考える

ビジネス

2018/4/2

『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちができること』(鈴木貴博/講談社)

 ロボットやAIの登場によって、近い将来、人間の仕事が確実に奪われる。このようなことが度々メディアで報じられ、各方面で議論を巻き起こしてきた。確かにやつらのせいで「あなたは今日からクビです」なんて言われる場面を想像すると、「AIのくそったれ!」と叫びたくなるのも分かる。しかし考えてみると、私たち人間はこれまでもイノベーションが起こる度に仕事を失ってきた。蒸気機関車のかま焚き、電話交換手、灯台守……。技術革新と失業はいつの時代もセットだ。

 そしてその代わりになる仕事を見つけてきたのも人間だ。彼らが人間の仕事を奪う未来が見えているのならば、それを受け入れてどう対処するか考えるべきだろう。次の技術革新の大波が迫る私たちのこれからについて『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちができること』(鈴木貴博/講談社)と共に考えてみたい。

 本書は経営戦略コンサルタントとして活躍する鈴木貴博さんが、AIがもたらす「仕事消滅」について深く考察した1冊だ。AIの登場によって、どの仕事がいつ頃からなくなり、私たちの生活がどのように変化するか解説している。さらにそれだけでなく、人類が彼らと共に幸せに暮らす方法はないか、その答えを導き出しているところが興味深い。

 鈴木さんは、ロボットやAIによって人類の仕事の約50%は失われるのではないかと予見している。うーん、胃が痛くなる話だ。だが、だからといって失業率が50%になることはない。

 そんな数値を叩き出す前に、政府が「ワークシェア」と呼ばれる「他の労働者と仕事を分かち合う働き方」の政策を打ち出すことで失業率を抑えるのだ。ただ、これにも問題がある。失業者を含む全職業人口で残り少なくなった仕事を分け合うので、ひとりひとりの仕事量や出勤する回数が減り、収入も減ってしまう。

 では、多くの人々が将来貧しい暮らしを送ることになるのだろうか。これについて鈴木さんは経済学的な見地から意見を述べている。

 国民の多くが失業した未来では、やはり経済が大混乱する。しかし従業員がロボットに置き換わったことで会社は以前よりずっと儲かる。そのため国民の1%にあたる資本家たちが大きな富を手にする。富裕層は手にした富でこれまで以上にぜいたく品を買い漁り、その結果、仕事が消滅する以前の水準までGDPが戻って、「経済は順調」という発表が政府からなされる。そして政府は富裕層や仕事のある中流層から税金を徴収し、失業した国民に生活保護手当を支給する。このようにして経済は安定、というより均衡する。

 人々の仕事がなくなると、むしろ儲かる人も出てくる。この行き過ぎた社会の均衡こそ、将来私たちが本当に危惧すべき問題だ。だが、これはすでに日本だけでなく世界中で起き始めている現象でもある。人類はロボットやAIに仕事を取られるしかないのか。一部の富裕層に搾取される未来を受け入れるしかないのか。その疑問に対して、鈴木さんは本書でこのように述べている。

「ロボットに給料を払わないからおかしくなる」

 これぞ鈴木さんが辿りついた、不幸な未来を回避する結論だ。いったいどういうことだろうか。ロボットに給料を支払うと、なぜ人類が救われるのだろうか。ここから先はぜひ本書でチェックしてほしい。

 仕事というのはヤッカイなもので、働きたくないが、働かないと生きていけない。金は人間を幸せにしないが、金がまったくないと幸せになれない。人類は面倒な経済システムを生み出してしまった。貨幣文化を生み出した昔の偉人たちを恨むばかりだ。しかし本書を読んでいると、ついに人類も労働から解放される日が来る予感がするような……しないような……。数十年後、人類はロボットやAIとどのようなお付き合いをしているのだろう。人間の代わりに金を稼いで手渡してくれる都合のいい存在になっていれば……と心から願うダメな自分がいて恥ずかしい。

文=いのうえゆきひろ