いつも笑顔のお母さんでいたいのに…。子育て奮闘中のお母さんにおくる、大人のための絵本

出産・子育て

2018/5/23

『あなたのことが だいすき』(えがしらみちこ:文・絵、西原理恵子:原案/KADOKAWA)

 大好きなかわいい私の赤ちゃん…、いつも笑顔のお母さんでいたいのに…。初めての赤ちゃんとの日々は、迷うこと、たいへんなこともいっぱいで、思い描いていたような理想のママではいられない。子育てに悩むお母さんの思いを受け止め、今しかない赤ちゃん時代を描いた『あなたのことが だいすき』(えがしらみちこ:文・絵、西原理恵子:原案/KADOKAWA)は、イラストレーターであり絵本作家である、えがしらみちこさんが、子育てに奮闘中のママに贈るメッセージ絵本です。

 赤ちゃんを抱っこしたときの腕の重み、柔らかい髪の毛の感触が伝わってくるような、やさしいタッチの水彩画とことばで綴られた本書には、お母さんなら、きっとだれでも感じる気持ちが描かれています。ページをめくるごとに、かわいい赤ちゃんの姿とともに、著者であるえがしらさんのメッセージがじんわりと心に沁み込んでいきます。

 えがしらさん自身、赤ちゃんが生まれて何もかもが試行錯誤で、理想のママにほど遠く、自己嫌悪の繰り返しの毎日だったそう。そんな中、子育てが終わった人たちが「この時期がいちばん可愛いのよね」とか「大変なのは今だけよ」と言っているのを聞いて半信半疑の状態だったのだとか。

 この本を作るきっかけとなったのは、西原理恵子さんの『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』(KADOKAWA)を読んだことだったそうです。

「ママ、ママ……だっこして」「やさしくしたいのに 笑顔で『いいよ』って言いたいのに ぜんぜんできてない」「家事なんて 全部あとまわしにしたらよかった もったいないことしちゃった だってあんな時間はもう二度とない」

子供といられる時間はおどろくほど短い。抱きしめられるのはほんの一瞬 ——西原理恵子さん

子育て中でありながらまさに子どもが飛び立とうとしている方の心境を覗き見た感じがして、急に私の中で点と点が繋がった感じがしたのでした。この気持ちを忘れないようにしたい、感動した要素を抽出して絵本にしたい。(そして、手元に置いて忘れそうなときに見返したい…!) ——えがしらみちこさん

 この時期が、どれだけ輝いていたか…。あの時間が愛おしくなり、切なさで胸がいっぱいになるシーンです。赤ちゃんを抱っこして月を眺めている姿は、あのころの自分の姿。永遠とも思えるほど、この時間が続くような気さえしていた。もっと抱っこしてあげればよかった、あの時どうして絵本を読んであげられなかったんだろう、精一杯頑張っていたつもりでも、あとから押し寄せてくるのはもう戻ってこない時間への後悔…。けれどお母さんのそんな思いをよそに、自分の足で歩きだした子どもの、未来への扉の向こうは晴れやかに描かれています。そして、えがしらさんの絵に救われた気持ちになります。

 かわいい姿をたくさん見せてくれる赤ちゃんを一生懸命育てた時間は、幸せであり喜びでした。娘さんとギクシャクしているお母さん、これから反抗期を迎える娘さんのお母さんは、あの頃と少しも変わらない思いに気づき、頑張ろうと思えるはずです。

 西原理恵子さんの『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』同様に、「社会へ乗り出す女の子、子育て奮闘中の新米ママ、ちょっと迷っている元女の子」に、手元に置いておいてほしい1冊です。人生の岐路では励まされ、子育て真っ最中のお母さんは、今を大事にしようと元気がでてくるでしょう。

文=泉ゆりこ