なぜ「毒親」は生まれるのか…許せない親の言動が「発達障害」と関係していた

暮らし

2018/6/5

『「毒親」の正体 精神科医の診察室から(新潮新書)』(水島広子/新潮社)

 毒親に悩む人にとって、親に傷つけられた経験を「自分は悪くない、悪いのは親だった」と認識し直すのは大事なステップといわれる。ともすれば「親が冷たいのは自分がいたらないせい」と自虐的に考えてしまう人が多く、まずは自己肯定感を得ることが毒親からの解放のファーストステップになるからだ。

 問題はその先だ。単に毒親を告発して謝罪させたところで事態がすっきり解決するわけではない。精神科医として臨床の現場で多くの毒親事例に向き合ってきた水島広子氏は、著書『「毒親」の正体 精神科医の診察室から(新潮新書)』(新潮社)で「怒りをぶつけられたからといってすぐに謝り反省するような人は、そもそも毒親になっていない」と、毒親を怒って反省させる形の解決は「幻想」と断言する。では、どうしたらいいのだろう。

 大切なのは「毒親」はなぜ生まれるのか、そのメカニズムを冷静に理解し、その上で自らの親の特性を分類し、それにあった対処法を身につけることだ。その具体的な方法についても、実は前述した『「毒親」の正体』が参考になる。

 そもそも毒親はどうやって生まれるのだろうか? 実はさまざまな解釈が世間に混在しているが、本書では「毒親を作る精神医学的事情」として次の4つに整理し、詳しく紹介している。

事情1 発達障害タイプ(ASDとADHD)

 ASD(自閉症スペクトラム障害)がある場合、空気が読めなかったり、自分の不安や恐怖を感じることを断定的に述べたり、他とのバランスを無視して自分が考えたことを押しつけたりすることがあり、無意識に子どもを傷つけてしまう。

 ADHD(注意欠陥・多動性障害)は、パニック時にひとつのことしか頭に入らないため、他のことに気をとられて子どものことに気が回らなくなったりする。

事情2 不安定な愛着スタイル

 親自身が十分に愛情をもらえず、不安定な育てられ方をした結果生まれるスタイル。「見捨てられるのでは」という不安を根本に持っているため、それが子育てにも悪影響を及ぼす。

事情3 うつ病などの臨床的疾患

 うつを発症し、子どもをかわいいと思えない、子どもの世話をする体力も気力もないというケースで、過去のトラウマ体験が親子関係に影響することも多い。アルコールなど物質依存があることも。

事情4 DVなどの環境問題

 現在親が置かれている不安定な環境が子育てに影響するケース。「環境」は臨床的疾患を発症・維持する重要なストレス要因となる。

 本書において注目なのは、実は臨床の現場において一番多いケースは、事情1の「発達障害」であるということだ。「発達障害」が原因の場合、いくら論理的に「解釈」しようとしても難しい面があったり、いくら注意しても徒労に終わったりすることがある。こうした現実を知った上で自分の現状を参照してみると、意外な発見があるかもしれない。

 本書はさらに、毒親の事情を解き明かした上で実践的な解決へのステップを提示してくれる。まずは「毒親」問題を抱える「子」に、そして「毒親」とされた「親」に向けて。だが、それらの具体的なステップに入るには、そこまでの内容について納得が得られることが重要。冒頭から著者は「最初から順に読んでいただきたい」と強く訴えるが、メカニズムを順序立てて抑えることで理解度も変わる。安易に解決策だけを求めても、複雑に絡み合った糸はなかなかほどけないということかもしれない。

 本書のラストは「“大人”として親を振り返る」。怒りや諦めといったさまざまな感情を経験した後、それでも先に進むためにはどうしたらいいのか、示唆を与えてくれる。時間がかかっても構わない。この本と共に自分を見つめ直してみるのも、解決へのひとつの道かもしれない。

文=荒井理恵