閉じ込められた場所は、人間を“食糧”へと変える施設――グロテスクで絶望的な世界を描く『食糧人類』

マンガ・アニメ

2018/8/27

『食糧人類―Starving Anonymous―』(イナベカズ:作画、蔵石ユウ:原作、水谷健吾:原案/講談社)

 食物連鎖の頂点に立っている人類。その常識を根底から覆し、上質なホラーに仕上げた作品がある。それが『食糧人類―Starving Anonymous―』(イナベカズ:作画、蔵石ユウ:原作、水谷健吾:原案/講談社)だ。

 バス通学時に拉致されてしまった高校生の伊江(いえ)とカズ。目が覚めると、ふたりは謎の工場にいた。そこは、「人類を食糧として扱う場所」。丸々と肥えた者は豚肉のように解体され、痩せ細っている者は“餌”を供給する場所へと送られる。異常な現実を目の当たりにした伊江は、そこで出会ったナツネ、山引(やまびき)とともに脱出を試みるが、行く手を阻んだのは異形の生物たち。超巨大なカマキリやイモムシのような化物は、人間を捕食し、無残に殺害していく。はたして、伊江たちは無事に帰還できるのか――。

 本作の恐ろしいところ。それはまず、圧倒的な画力をもって表現される世界観だ。作画を手掛けるイナベカズさんは、前作『アポカリプスの砦』(講談社)でおぞましいゾンビを描いてみせたが、本作でもその手腕を発揮。伊江たちの前に立ちはだかる巨大生物たちは、非常にグロテスクで吐き気を催すほどだ。

 さらに、陰謀論めいた展開も背筋に冷たいものを走らせる。どうやら、人類を食糧とみなす施設と国家はつながっているよう。国という巨大な組織を相手にしたときに感じる無力感。それはそのまま絶望感へと変わり、読者を恐怖のどん底へと突き落とすだろう。

 自分が食べられてしまうこと、被食者になりうること。現代に生きる人たちは、そんなことを想像もしたことがないはず。だからこそ、本作は恐怖を感じさせる。想像の余地もない事態を見せつけ、逃げ道を塞ぐ。その先に光があるのかすらわからない。現実世界ではなかなか遭遇することのない場面を提示することで、「どうすればいいのだろう……」という答えのない迷路へと誘う。

 グロ耐性のない人には少々オススメしづらいが、圧倒的な絶望感を味わいたい夜にはうってつけの本作。自身の“常識”が破壊されることで、これまでになかったホラー体験ができるはずだ。

文=五十嵐 大