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『こころ』異聞: 書かれなかった遺言

『こころ』異聞: 書かれなかった遺言

『こころ』異聞: 書かれなかった遺言

作家
若松英輔
出版社
岩波書店
発売日
2019-06-22
ISBN
9784000229678
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『こころ』異聞: 書かれなかった遺言 / 感想・レビュー

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trazom

「図書」に連載中から、漱石好きの間で話題沸騰だった作品。若松さんは「「こころ」は近代日本における最初期の宗教文学」と捉え、大胆な仮説を投げかけてくる。Kはキリスト者ではないか。「先生」の態度は、キリスト教が最も嫌う「怠惰」という裏切りだった。「御嬢さん」は全てわかっていたのではないか、その上で「先生」が秘密を語り始めるのをじっと待っていた。この小説を「私」は、いつ書いたのか。そして、「こころ」は、「「私」の遺書」だったのではないのか。…肯定するか否かに拘らず、若松さんの読み解きは知的興奮に満ちている。

2019/08/13

抹茶モナカ

高校の教科書に載っていた『こころ』は、その当時、自分で全編読んだ記憶がある。好きな小説で、その後も何度か読み返した記憶もある。この本は『こころ』を丁寧に読み解いた本で、文章も平明で読みやすい。先生の遺書の分量の異常な多さも問題にはしないし、文芸作品として素直に読むスタンス。先生の自殺について、乃木希典の死が引き合いに出される点で批判があるのも何処か(大江健三郎の指摘だったか)で読んだ記憶もあるけれど、そんな点も深堀しないので、漱石に好意的な書評の本なのである。何となく、自殺関連の本ばかり読んでる秋の僕。

2019/10/08

フム

先日読んだばかりの、漱石の『こころ』が若松英輔さんの手にかかると、こんなにも深い読みになるのかと、感心しながら読んだ。しかし、正直言うなら、小説を書くということが、まだ手探りだった近代文学の時代に、そこまでの意図があったのだろうかという疑いもわきつつ読んだ。新聞に連載されているのを当時の人々が読んだ時よりは、後世の人々によって過大な意味付けがされているという作品もあるのではないか、などと考えることは、漱石の文学研究に詳しい人からみたら、無知な素人の直感に過ぎない。

2019/11/19

チェアー

「こころ」は、まるごと遺書なのかもしれない。「私」にとって「先生」のことを書くことは遺言だったのかもしれない。そもそも「こころ」はだれの物語なのか。「私」の話なのかもしれないし、「御嬢さん」、あるいは「K」の。それぞれの視点があり「こころ」がある。読み解くのはすごく難しい小説だなあ。何回か読んだけど、また読みたくなる。

2019/08/28

yumicomachi

「自己の心を捕へんと欲する人々に、人間の心を捕へ得たる此作物を奨む」漱石自身が書いたとされるこの広告文の通り、小説「こころ」は単なる恋愛小説でもなければしばしば高校の現代文の授業で紋切型に説明されるように「近代人の自我の悩み」を描いたと言っても足りない、人間の心の重層的な有り様を深く追求した作品であることが、平易で血の通った文章で綴られている。終章と「あとがきに代えて」に見られる、小説中で多くを語らない女性たちが、語らないが多くを深く感じているのではないかという指摘と彼女たちの心情の推察にも納得がいった。

2019/11/10

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