タウリス島のイフィゲーニエ (岩波文庫 赤 407-7)
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タウリス島のイフィゲーニエ (岩波文庫 赤 407-7) / 感想・レビュー
松本直哉
粗けずりで奔放なエウリピデスにくらべて、登場人物のせりふが理性的で格調高く、理を尽した説得を王が受け入れる終盤を読むと、著者は言葉の力を信じていたのだなと思うし、王があまりにも物分かりがいいのが不自然にさえ思える。西と東の異文化同士の邂逅のはざまに立ってとりなし、和解に導くヒロインはまるで外交官のように見えて、ゲーテが政治家でもあったことを思い出す。タウリスは現在のクリミアであり、昔も今も戦火が絶えなかったが、いまのクリミアにイフィゲーニエのような言葉がいかほどでも力を持ちうるのだろうか、とふと考える。
2024/03/27
ホームズ
『タウリケーのイーピネゲイア』を元にした作品。ギリシア悲劇とはまた違った感じになっていてこれはこれでいい作品になっている気がする。後半のイフィゲーニエとトアスの会話のシーンとかは読んでいて引き込まれる感じで良かった(笑)
2013/05/20
きりぱい
女神ディアーナの怒りを鎮めるためいけにえにされたイフィゲーニエが、当の女神に助けられ、タウリス島で女祭司として仕えるうちに島の王トーアスに求婚され・・という話。それにしても皆の幸せのために犠牲になったのに、トロイは落ちたとはいえ、再会した弟からその後の家族の血なまぐさい悲劇を知らされる甲斐なしな役。彼女を引き留めておきたい者、汚れた罪を祓うために連れ帰りたい者と、それぞれが意志を貫くなか、神の計らいにかき回されてひととき与えられた幸せを奪われ、結局は神の言葉に重きを置いて心を抑えるトーアスに同情する。
2013/09/20
ダイキ
大学図書館。所謂疾風怒濤期のロマンティックな作品で、清々しい読後感。「男は急激な闘いによって不滅の名誉を得ることもできましょう。/たとえ闘って斃れても、詩歌がその誉れをつたえます。/けれど、後に見捨てられて生きながらえる女たちの/数かぎりない涙を/後の世の人々は、数えはいたしません。そして/一つのひそやかな女心が、にわかに死んで行った友を/むなしく呼び戻しながら悲しさに心も絶え入る思いがして/昼も夜も泣きつづけていても/それについては、詩人も歌いません。」
2016/09/23
そーすけ
148*エウリピデス作品とは、イフィゲーニエが神像の持ち出しや王を欺くことに躊躇する点が異なる。そして、最後は王と直接対決。自分は、ゲーテ先生のように人間性に信頼は抱けないかな。王を騙して、さっさと逃げ出すエウリピデス作品の方が好き(笑)。
2018/07/18
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