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高野聖・眉かくしの霊 (岩波文庫 緑27-1)

高野聖・眉かくしの霊 (岩波文庫 緑27-1)

高野聖・眉かくしの霊 (岩波文庫 緑27-1)

作家
泉鏡花
出版社
岩波書店
発売日
2023-09-15
ISBN
9784003600450
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高野聖・眉かくしの霊 (岩波文庫 緑27-1) / 感想・レビュー

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夜長月🌙@5/19文学フリマQ38

(読書会のための再読) 現代語版も出ていますがやはり文語調そのままで読んでもらいたい作品です。明治33年、120年以上前の作品ですから読みにくさはありますが、その文体が醸し出す雰囲気と妖女の色気は離しがたいものがあります。『蝶衣を纏うて、珠履を穿たば、正に驪山に入って陛下を相抱くべき豊肥妖艶の人が、その男に対する取廻しの優しさ、隔てなさ、深切さに、人事ながら嬉しくて、思わず涙が流れたのじゃ。』

2024/04/10

藤月はな(灯れ松明の火)

再読。二つの作品に共通するのは美は魔ともなる事だ。「高野聖」での美しきお嬢さんは会ったばかりの僧と共に水浴びをし、甲斐甲斐しく、世話を焼く。その姿は性による差異やそれによって生じる苦悩と憤慨をまだ知らぬ童女のように無垢ですらある。だが、実は自分に情欲を抱いた男を動物に変えるキルケーのような一面を持つのだ。彼女の美は男にとっては罠である。しかし、彼女の無垢な本性は昔から変わってはいない。その心根と対象者との意思の不一致(情欲と客人としての対応)で起こる現象のギャップを「魔」と呼ぶのだと思った。

2023/10/19

かふ

鏡花の幻想譚は、近代化の汽車とか出てくるのだが、自然を喪失した都会から山奥へ旅することで失われた日本の文化へと尋ねいく。それは柳田国男がいう山の神であったり湖の女神だったりするのだろう。高野山の僧侶が怪奇な事件を旅人に語る『高野聖』は、僧が木の根を潜って冥界へと尋ねる。『古事記』の冥界下りを連想させる。冥界は蛇と蛭の山道なのだが、蛭の山というのがホラーだった。その山を抜け出して奇妙な宿に泊まるのだが、そこの女将がまた悩ましいのは常人ではないからで、僧侶の背中を流すシーンはエロスとタナトスを含んでいる。

2023/12/14

春ドーナツ

たまたま14冊続けて電子書籍を読んだ。電子書籍の弱点は充電である。kindleをパソコンにつないで充電しているあいだ、虚空を見つめていればよいじゃないか、とあなたはいうかも知れない。活字中毒者(死語?)の私は積読塔から薄い本(コミケの同人誌ではなく)を見繕って活字に身を浸すことになる。去年は鏡花生誕百五十年であった。飛び石読書とだったけれど、ふたつの解説(哲学的と顕微鏡観察的)に目を通し、鏡花の底を知らない幽玄さにはたと膝を打つ。説話体はツァラトゥストラと共鳴する。意識の裏側を覗きこむようで怖気をふるう。

2024/01/08

NAGISAN

1900年の作品。学生時代に頓挫した記憶があるので、文語調は読み慣れていないが、辛抱強く読んだ。最後に種明かしがあるので、読み返すと理解が進むものの、想像範囲が狭まる。中国の怪奇小説・三娘子に着想を得たと言われている(本人の言であるかは不知)。中国小説と比較し、日本の怪奇小説には、心の美しさと魔妖さが交差するのが多い気がする。小説から離れ、若き高野聖と女妖の心情を思い返すのも楽しい。雨月物語を再読しようと思う。

2024/04/04

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