読みなおし日本文学史: 歌の漂泊 (岩波新書 新赤版 550)
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読みなおし日本文学史: 歌の漂泊 (岩波新書 新赤版 550) / 感想・レビュー
i-miya
2011.03.04 (副題-歌の漂泊) (カバー扉) 古えには、神聖にして神のものとされていた歌。先進大陸文化の詩の到来で座を追われる。歌のさすらいが始まる。物語、連歌、俳諧、能、歌舞伎を生み出す。それが日本の文学史。大胆なとらえなおし。(高橋睦郎) 1937、福岡生まれ。1962、福岡教育大学卒業。詩人。
2011/03/06
佐島楓
「読みなおし」とあるが、「源氏物語の登場人物には実名が存在しない(確かにそうだ!)」という事実から入り、文系人間でもここまで突っ込んでは勉強しないだろう(専門の方は違うだろうけれど)と思われる「古事記」の分析で惹きつける。歌から歌舞伎にいたるまで、古来すべての芸能は神のものであった、という原点が見えてくる。日本史の簡単な復習にもなる。古文は勉強法が嫌いだったから遠ざけていたのだが、もう一度いろいろ読んでみようかという気にさせてくれた。
2011/10/24
nao1
古事記では歌は神が作ったものを巫女が発している形だそうで。源氏物語や万葉集はもともと「文弱の徒の慰み」であったとはおどろき。男性の知識人は漢詩文を読むの当たり前だったのに、明治維新でガラっと変わってしまったんだな。「ますらお」と「みやびお」の系譜はおもしろい論。日本人が上代より求めつづける理想像で「みやびお」ってのは今だったらジャニーズで、「ますらお」は格闘技やってる人とか?最近の文学ではそういう理想的な男性像を描いたものを思いつかない。あまりにも欧米風になったから日本文学のルーツが途絶えつつあるのかな?
2016/04/08
Gotoran
詩人の著者が歌の漂泊の歴史を静かに熱く語り、日本の文学史の愉しみ方、学び方を教えてくれる。文学史を、和歌から歌物語、能楽を介して俳諧に及ぶ歴史と捉え、古事記から万葉集、古今和歌集々々、伊勢物語から好色一代男へ(みやびお)、戦記物・隠者文学・町人物(ますらお)、祝詞・能・歌舞伎(神前から人前へ)、連歌そして俳諧(漂泊の果て)、に分けて、想像力豊かに独自の視点で解説されている。高校時代に古文で痛い目に合った私でも、興味深く読むことができた、“はじめに”の「源氏物語」のこと、『みやびおとますらお』が特筆出来る。
2011/12/30
さたん・さたーん・さーたん
副題にもある「漂泊」という言葉の具体的な意味が解説されないまま、古事記~和歌勅撰集~奥の細道までの日本文学の変遷をたどる。著者自身が詩人であることからも、「歌の漂泊という言葉に酔っていないか」と思わされることもあるが、かつて人の届かぬ所より降りてきた歌がそののち権力者に愛でられ、その隆盛と没落を越えて民衆の下へたどり着いた。その事実と、終章での現代人の古典への無関心さへの言及を考えると、やはり歌・文学はどこへも知らぬ所を漂っているのだと思える。
2017/01/19
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