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私の大阪八景 (角川文庫)

私の大阪八景 (角川文庫)

私の大阪八景 (角川文庫)

作家
田辺聖子
出版社
KADOKAWA
発売日
2017-08-25
ISBN
9784041061336
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私の大阪八景 (角川文庫) / 感想・レビュー

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優希

日常の中に戦争がある風景をまざまざと見せられました。体が資本の日々だからこその男尊女卑の辛さがあるような気がします。男性は出征という名ばかりの名誉のために花のようにもてはやされ、女性はただ戦時下の日常でひっそりと暮らすしかなかったのですね。そんな中でも中原淳一の絵を愛でたり、教会に行ってみたり、ささやかな日常を大切にしている姿に惹かれました。おせいさんが戦争を生きたからこそ生まれた作品。戦争を知らない世代ですが、心に刺さるものがありました。

2017/09/10

chantal(シャンタール)

ドラマ「芋たこなんきん」見てどうしても読みたくなって積んだこちら。田辺聖子さんの自伝的小説。青春時代がそのまま戦時中だった田辺さんが軍国少女になってしまうのは仕方ない。そんな時代でも、何となしに楽しくやっているように見えるけれど、周りの人が出征したり、学徒動員で工場へ行かされたり、美味しいものが食べられなかったり、戦争ってやはり悲惨でしかない。そんな時代を私は絶対に迎えたくないと思う。最近色々物騒だけど、大丈夫なんだろうか?彼女がどうこうより時代なんだろうけど、朝鮮人への差別はすごかったようだ。

2024/04/11

Shoji

主人公トキコの多感な時代は目まぐるしかった。悪化する一途の戦局、空襲、敗戦、戦後復興、怒涛の時代はトキコにとって、女児から少女、大人へ成長していく時代でもあった。生活の全てが深刻に不足する時代、全編に漂う戦争の生々しさ。成長していくトキコの瑞々しい感性、根っから大阪人のユーモア、厳しい戦局との対比はとてつもなく切ない物語に私は感じた。良書だ。

2018/10/25

戦時下における国民の生活。トキコが少女から大人の女性になる過程で軍国主義の色が強くなったりキリスト教にハマったり、女性版「少年H」のようでした。残酷なシーンはないにも関わらず作者が戦争経験者だからこそ描ける戦時下の街並、空襲後の異臭、学生生活、戦後の人の変わり様など細かく伝わりました。戦争が悪とかアメリカが悪とか単純なテーマではない、生まれた時から戦争はあり青春時代も国に尽くした少年少女がいたこと、生き残った人々が飢えながらも前を向いて生きてきたこと等、多くを語らずして多くを訴えてくる良作だと思います。

2017/12/12

鍵ちゃん

銃後の子どもはとにかく体が丈夫でないとあかんのだ。在郷軍人の小父ちゃんが台に上がって号令をかけるラジオ体操。歌う唱歌は「敵の将軍ステッセル亅。千人針と慰問袋のある戦時下、トキコは高等女学校の入学試験を受ける。出征した男たちは、桜のように散り、人生の花を独り占めし、女はカスの部分を掴まされる。中原淳一の絵を見ては、ちぢれ毛をまっすぐにしてくださいと祈る、ささやかな日常の中に戦争が描きこまれた。トキコの無邪気さが冴え渡り、戦争を通じての生活の変化がよくわかる作品でした。

2023/08/24

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