昨日星を探した言い訳
「昨日星を探した言い訳」のおすすめレビュー
『いなくなれ、群青』の河野裕が初めて“恋愛”を描く。世界を変えようとする少女と少年の倫理と愛の物語
『昨日星を探した言い訳』(河野裕/KADOKAWA)
『昨日星を探した言い訳』(KADOKAWA)は、人気作家・河野裕が初めて“恋愛”をメインテーマにした長編小説。といっても、ただ若者たちのキラキラした恋愛模様を描いた作品になっているわけではない。これまでにも著者は「サクラダリセット」シリーズや『いなくなれ、群青』に始まる「階段島」シリーズなどを通して、少年少女が「正しさとは何か」「本当の優しさとは?」といった問いに葛藤する姿を描き続けてきたが、本作ではさらにそうした倫理にまつわる対話に大きな比重が置かれている。これは世界を変えようとする少女と、フェアネスにこだわる少年が、対話を重ねていくことで互いを誰よりも深く理解し合い、それが恋愛という特別な感情になっていく過程を描いた物語だ。
物語は坂口孝文という25歳の青年が、すでに廃校となった母校、制道院学園の校舎で、かつての同級生、茅森良子を待つシーンから始まる。8年前、坂口は茅森を裏切り、ふたりは関係を断った。坂口は再会を願う手紙を茅森に送っていたのだが、その文面にあった“あの日、時計が反対に回った理…
2020/8/24
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「これまで避けてきた“恋愛”を初めて素直に描いた小説です」『昨日星を探した言い訳』河野裕インタビュー
河野裕 こうの・ゆたか●1984年、徳島県生まれ。グループSNE所属。2009年、『サクラダリセット』でデビュー。主な著書に『いなくなれ、群青』から始まる「階段島」シリーズ、『つれづれ、北野坂探偵社』『さよならの言い方なんて知らない』などがある。
すでに廃校となった母校の校舎で、坂口孝文は茅森良子を待つ。彼女は坂口がかつて恋をして、そして裏切り、深く傷つけた人だった。そんな坂口から再会を願う手紙を受け取った茅森は、強く思う。 〝─私は、あいつが嫌いだ。大嫌いだ。〟 『サクラダリセット』や『いなくなれ、群青』に始まる「階段島」シリーズなど、少年少女たちの純粋ゆえの葛藤をジャンルに縛られずに描いてきた河野裕さん。最新刊『昨日星を探した言い訳』は、そんな河野さんが初めて手掛けた長編恋愛小説だ。 「人間の関係性をひとつの枠に当てはめることがあまり好きではなく、これまではむしろ〝恋愛の枠におさまらない特別な関係〟を書くことに興味がありました。ただ、それは『階段島』シリーズで〝やりきった〟という思いがあったんです。それで今回は、避けてきた〝恋愛…
2020/9/5
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昨日星を探した言い訳 / 感想・レビュー
ベイマックス
読み応えありました。一筋縄ではいかない恋愛小説。全寮制の中高一貫校が舞台。黒い目の人と緑色の目の人が存在する世界で、緑色の目の人が差別されていた歴史がある。◎頭脳明晰な高校生は人間関係や恋愛感情も理論武装なのか?自分が、高校生の時こんなに考えていなかった。今も日常生活でこんなに考えないけどね。
2022/11/13
よっち
全寮制中高一貫校・制道院学園に進学した坂口孝文。中等部2年進級の際、映画監督の清寺時生を養父にもつ茅森良子が転入してきて、坂口と運命の出会いを果たす青春小説。生徒会長を目指す真っ直ぐだけれど脇の甘い茅森を、影から支える坂口の密かな共犯関係。二人だけでたくさんの想いを語り合い、揺るぎない信頼と甘酸っぱい関係を積み上げてきたからこそ、思ってもみなかった急展開には驚かされましたけど、どこまでも頑固者で不器用で揺るぎない二人が、意外な転機と巡り合わせの末に迎えた結末には、苦笑いしつつもぐっと来るものがありました。
2020/08/24
ツバサ
倫理や愛についてありとあらゆる工程を経てたどり着く最後には、もう最高としか… どれだけ言葉を尽くしてもこの作品の良さは伝えきれないと思う。だからこそ、気になっている方には読んで欲しい。きっと気にいる台詞や描写があるから。最後まで油断出来ない小説です。
2020/08/24
RASCAL
「サクラダ・リセット」「いなくなれ、群青」の河野裕さんの近作。一風変わった二人のボーイ・ミーツ・ガール的な学園小説なのだけど、そこは河野さん、緑の目と黒い目、独特の世界観がピリッと効いている。大人びた二人の、でも中二病っぽいと思えなくもないしちめんどくさい恋愛ストーリーに、河野さんの回りくどい文体がマッチして、まずまず面白く読めました。拝望会、ちょっと「夜のピクニック」みたいですね。制道院学園という籠の中の青春が、時代の変化とともにあとかたもなく消えていくことに、一抹の寂しさを感じます。
2020/10/24
蒼
初読み作家さん。500年前征服された緑色の目を持つ人と征服した黒い目の人の子孫の間に厳然として残る差別の中で、頑ななまでの純粋さで自分さえも傷つけながら、14歳からの4年間を共に過ごした二人の男女の青春物語。前半は理不尽さと闘う二人の姿に引っ張られるように読み進めたられたが、後半の二人の回りくどさにだれてしまって、物語世界に浸り共感するには自分の心は硬直しきっている事を確認するだけの読書になってしまった。
2022/02/09
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