川のほとりで羽化するぼくら
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川を越えれば、新たな景色が見えてくる――息苦しさから心を解き放つ連作短編集『川のほとりで羽化するぼくら』彩瀬まるインタビュー
『川のほとりで羽化するぼくら』は、七夕伝説に材をとりつつ、空想の翼を軽やかにはためかせた短編集。収録された4編は、世界観や設定こそ異なるものの、どれも“川の向こう”へ渡る勇気を与えてくれる。
(取材・文=野本由起 撮影=山口宏之)
「以前刊行した『不在』は、ある女の子が封建的な家の閉鎖性に向き合い、必要なものと不要なものを選別して人生の血肉としていく話でした。これがけっこう面白く書けたので、今回はもう一歩進んで、私たちを縛る固定観念から脱出し、まったく別の価値観へ向かう物語を考えようと思いました。そんな話を担当編集者としていたところ、『深く考えず、慣習として行っていることって多いよね』という話題から『七夕って何に祈っているんだろう』という疑問がふと生じたんです。そこから七夕伝説をモチーフに、目に見えない縛りという“川”を越える話を書いてみようと考えました」 最初の短編「わたれない」は現代日本を舞台にしているが、そこから神話ファンタジー、SFへとダイナミックに転調していく。 「川を越えていく連作短編集だから、どんどん世界を飛躍させていいんじゃないか…
2021/9/6
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川のほとりで羽化するぼくら / 感想・レビュー
starbro
彩瀬 まるは、新作中心に読んでいる作家です。本書は、川を渡るをテーマにしたバラエティに富んだ短編集でした。オススメは、『わたれない』&『ゆれながら』です。 https://kadobun.jp/news/campaign/8i9byxd5ngcg.html
2021/09/11
しんたろー
川をモチーフにした4つの短編は「己の限界や社会の常識を超えるには?」という事をテーマにした感じの物語…主夫による育児&家事、羽衣伝説に準えたファンタジー、生殖器が抑制された近未来の男女、傲慢な夫に尽くし続けた老女…少しずつテイストは違えど、現状に疑問を持って変化を求めて足掻く人々への愛が感じられる。中でも彩瀬節とも言える「妖しくも切ない香り」漂う文章の『ながれゆく』は、儚い絵が目に浮かぶようで堪能。娯楽より文学寄りの創りなので好みは分かれそうだが「エンタメ大好きオジサン」の私でも物想いに浸りつつ楽しめた♬
2021/10/19
いつでも母さん
その川は全ての人間の中に存在する。母だから父だから、男だから女だから、妻だから夫だから、親だから子だから…自分とそれ以外と。声高に叫んでいるのではないのに、深く静かに突き刺さる彩瀬まるの世界。冷たくは無いのに温度が下がる。鮮明な色彩が広がり何処へでも行ける。ような気になる。行かないけど(私はね)短編4話。私の好きな彩瀬まるを堪能した。
2021/09/20
みっちゃん
こういう彩瀬さん、大好きだ。バラエティに富んだ4つの話に必ず現れるのは川と橋。川はその願いとは真逆に己をがんじがらめにしている価値観やしがらみの象徴。その橋を渡っていきたい、こちらの世界にあるのは苦しみと絶望だけだから。が、その枠組みから飛び出す事への不安と怖れ。でも、でもでも!迷い苦しみながら彼らが選びとったもの。私も「その時」には躊躇なく飛び出せるように胆力を養っておきたい、と思った。どの話も好きだけど、織姫彦星、羽衣伝説を美しい文章で絡ませた『ながれゆく』が素晴らしい。ラストの荘厳なこと!
2021/11/11
モルク
4つの短編集。それぞれの話に川が出てきて、あちら側とこちら側を結ぶ橋を渡る。川は固定観念の象徴か。仕事を辞め主夫となり慣れない育児をする夫。ママじゃないと駄目な子供、ママじゃないと入れない世界価値観に限界を感じていた夫に救世主が…を描く「わたれない」から始まる。七夕、羽衣伝説をおりまぜた「ながれゆく」が美しい。ファンタジーであり、天の川が隔てている世界の理不尽さが混じる。最終話の「ひかるほし」は夫の言いなりに生きてきた老女がぼけが入りますます意固地になった夫から前に踏み出そうとする姿に共感が持てた。
2021/11/25
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