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油絵は謎をささやく

油絵は謎をささやく

油絵は謎をささやく

作家
翔田寛
出版社
KADOKAWA
発売日
2022-03-26
ISBN
9784041124567
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油絵は謎をささやく / 感想・レビュー

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パトラッシュ

美術品を扱うミステリはカネ絡みの欲望渦巻くパターンが多いが、珍しく歴史物と交錯して思いがけない事実が浮かび上がるドラマを成立させている。明治の画家高橋由一作品の真贋調査を依頼された研究者の小宮山香織が、権力者に反抗できない画家が絵に込めた思いを調べるうちに殺人事件に巻き込まれ、隠された過去と現在の犯罪の真相にたどり着くプロセスは意外性に満ちている。専門家としての意地とプライドで捜査を諦めない香織の個性が事件とマッチし、物語に疾走感を生んでいる。明治パートをもっと充実させれば、小説として厚みが増していたが。

2022/08/05

ちょろこ

謎だらけの一冊。明治時代の隧道を描いた一枚の油絵は贋作なのか、大学教授らが迫るミステリ。真贋どちらかの謎、描かれた時に前後して起きた女性失踪事件、隧道建設を取り巻く騒動は関係するのか謎だらけの油絵に隠され秘められた意図が次第に浮き彫りになっていく過程は明治と現代を行き来し終始惹きつけられた。裏向きの意味、遺された言葉の意味といい細かな点も謎の輪を大きく広げ真相へ導いてくれた気がする。さまざまな心情をも閉じ込める絵画の奥は想像するほど興味深い。巧みな一計にはなるほど。そして手紙が動かす人の心、そこにほろり。

2022/05/15

タイ子

明治期と現在を虚実混合の物語にして読ませる手腕はこれぞ翔田さん。一枚の油絵は本物?贋作?そして、この絵の中に描かれた謎は一体何なのか。日本文化史の准教授・香織の元に元教え子のはるかが助けを求めにやってくる。実家に保管している絵を博物館に売却する予定が、その絵に贋作の疑いがかかり香織に真贋してもらいたいという。絵が描かれた頃に起こった一人の女性失踪事件、道路事業をめぐる百姓一揆。絵に描かれた風景。ワクワクする展開に油絵は謎をささやき続ける。不穏なミステリの中で明治期に関係した結ばれない2人に胸が熱くなる。

2022/05/11

うののささら

鮭で有名な高橋由一が書いたとされるトンネルの絵が偽物だと疑われ大学教授が調査にのりだす。高橋由一は洋画の走りで作品の割に評価が高いと言われるが価値あるんだろうな。紆余曲折が隠された隧道を書いた油絵をめぐる奇妙な由来。無慈悲に潰される民衆の怨嗟を美麗な油絵で塗り込むような明治維新。悪辣な罠を密かに仕掛ける稀代の策士三島通庸の大がかりな陰謀。画風、筆致、構図など作者の作風だけでなく。絵を描いた時作者がなにをしてたとか専門家は調べるんだな。勉強になりました。

2022/05/26

さっこ

実家が所有する一枚の油絵に贋作の疑いがかけられたと教え子から相談され、真贋を調査することにした文化史の准教授、小宮山香織。調査していく中で明治12年に起きた豪農家の次女失踪事件と、明治期の道路拡張事業が絡み合っていく。油絵の持つ謎が、新たな事件を呼び込んでいく。明治期の人とのつながりや叶わぬ思いや意志などが現代に受け継がれていた。少し切ない。

2022/06/12

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