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大きな鳥にさらわれないよう

大きな鳥にさらわれないよう

大きな鳥にさらわれないよう

作家
川上弘美
出版社
講談社
発売日
2016-04-22
ISBN
9784062199650
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ジャンル

大きな鳥にさらわれないよう / 感想・レビュー

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starbro

川上弘美は新作中心に読んでいる作家です。本作は(近)未来を舞台にした連作短編集です。紀元前と現代でほとんど人間の生殖、生態等に関して変わっていないとすると、数千年先の話か、科学の進歩同様加速度的に変化した近未来なのか微妙な設定です。愚かな現代の人類に対する警告、未来の人類に対する危惧なのか解りませんが、いずれにしてもこの物語ではかなり危うく人類の未来が描かれています。いずれにしても6-2とか1-5とか数字で呼ばれる人間には絶対なりたくないですネ。

2016/05/25

❁かな❁

何故だろう。すごく懐かしい雰囲気が漂う。人類が滅びゆこうとしているところを存続させていこうとする近未来のお話でありながら、人類の始まり、進化などを感じることができる。川上弘美さんの作品を読むのは9作目。近未来と言うよりももっと遥か遠い未来のお話かな。未来とも過去ともとれてしまう。とても幻想的なSF連作短編集。川上弘美さんらしく淡々と穏やかに紡がれていく。壮大な慈愛と宇宙を感じる。生と死、クローン、人工知能など色々考えさせられる。私は「形見」がお気に入り。人類とは、愛とは何か。壮大で純粋な神話のような物語。

2016/10/14

pino

冒頭の湯浴みのシーンでの女たちの会話が、ただ事ではなくて不思議話の体で読み始めたら、それだけではおさまらない壮大なSFだった。苦手な分野なので、種明かしにつながる章が難しくて。だが各章のエピソードが愛しくもあり、最後まで読み通せた。反面、システム化された社会やじわじわ滅亡に向ってる様子が空恐ろしい。憎しみと争いを繰り返すうちに実社会でも起こるのではないか。そんな嫌な予感もする。とは言え、物語を支えているのは小さな営みから生まれる愛だと思う。それを追って一冊分、数千年の旅をした。そして微かな希望も見えた。

2017/09/04

かりさ

川上さんの初期作品を思わせる、不思議で幻想的なお話。ごく当たり前に読み進めると何かが違う。これは現実のお話ではなくSF世界なのだ。遥か彼方遠い未来、人類の滅亡を前に新しく誕生した世界。ここに生きる生物たちはどこか諦めを漂わせながらも進化してゆく命の種を繋いでゆく。冒頭の「形見」がたまらなく好きで何度も文字をなぞり、静かに湯浴みする女たちに同調するかのように入り込みました。難解さに慣れてきた頃、最後の話に、再会のような懐かしい気持ちに包まれ満足して終えました。誰かが語る昔話のような柔らかで優しい世界でした。

2016/07/26

あも

絶句。静かに身体が震える。去来するこの感情は畏怖だ。柔らかく優しく懐かしく恐ろしい。まるで遠い遠い過去に紡がれたような、いずれまかり来る未来の神話。種の寿命を迎え滅びつつある人類。少人数の途絶したコロニーの物語が"見守り"という存在でゆるやかに繋がり収斂していく。鈍く光を吸い込む灰色に包まれた世界がここにある。時折、抗うように咲く鮮やかな花の美しさに目を奪われるのも良いだろう。降り積もる灰を止めることは誰にも出来ないのだから。ほら、耳を澄ませてごらん?大きな鳥の羽ばたきは、もうあなたの頭上まで迫っている。

2016/12/14

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