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地球にちりばめられて

地球にちりばめられて

地球にちりばめられて

作家
多和田葉子
出版社
講談社
発売日
2018-04-26
ISBN
9784062210225
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「地球にちりばめられて」のおすすめレビュー

誰もが移民になりえる時代に。失われた言葉を探して旅する先で見つけるものとは『地球にちりばめられて』

『地球にちりばめられて』(多和田葉子/講談社)

 同じ日本語を話していると思うから喧嘩になるんだなあ、と思うことがある。言葉の力を信じすぎているのかもしれない。話せば、伝わる。伝わらないのは、言葉が足りないから。でも言葉を尽くせば尽くすほど、理解から遠ざかることは少なくない。それに気づいたのは、すれ違い続ける二人のあいだに“通訳”として介入したときだ。いや彼が言っているのはそういう意味じゃなくてね、彼女はこういうことを伝えたいんだよ、と逐一説明するのは骨が折れた。人間がちがえば、言葉のもつ背景も、使う文脈もまったく異なる。人は誰しも、その人だけの母国語を話しているのだ。そんなことを『地球にちりばめられて』(多和田葉子/講談社)を読んで思い出した。

 本当におもしろい小説を読んだとき、内容について語るのはとてもむずかしい。物語に触発されて、記憶がよみがえったり思索が旅に出たり、自分の内側からうまれる声に耳を傾けたりするので手いっぱいになるからだ。本作も、そんなたぐいの小説だ。

 最初の語り手は、デンマークの大学で言語学を学ぶ青年・クヌート。“母国を失…

2018/6/15

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地球にちりばめられて / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

ヴェネツィア

平易なのか難解なのか、よくわからない小説。キー・コードは言語なのだが、言語の可能性を問うているようにも、またコミュニケーションの不可能性(少なくても困難さ)を問いかけているようにも見える。そもそも言語そのものも、その実態が曖昧である。失われた国家(日本)の失われた言語の一方で、Hirukoはパンスカを考案し、それをコミュニケーションの道具としている。6人の話者が登場するが、彼らの母語(その概念もあるいは疑わしいかもしれない)は、全て違っているし、まて彼らは基本的に複数の言語を操っている。そこにある種の⇒

2023/06/06

starbro

昨年12月に読んだ「太陽諸島」が好かったので、三部作全作品を読むこととしました。多和田 葉子、2作目です。 まずは第一部、ユーモアとアイロニーとメタファーに溢れたコスモポリタンな作品、ムーミンが私の地元新潟に亡命していたとは思いませんでした(笑) 続いて第二部「星に仄めかされて」へ。 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000190751

2023/02/20

なゆ

これは…深い深い余韻を残す、多和田さんにしか書けないであろう話。言葉をめぐる壮大な話。興味深いのは、恐らく“日本”という国はなぜか消滅していて、“鮨の国”と呼ばれている事。ヨーロッパ留学から自国に帰れなくなり、移民となってデンマークで働くHirukoが、母語で話せる人を探す旅。本の中では国境線も薄く見え、Hiruko独自のスカンジナビア共通言語パンスカで言葉の壁も低くなり、性別のお引っ越しも気にならない。四つの言葉が飛び交うなか、音のない言葉にみんなで耳と目をかたむけて理解しようとする場面がとても美しい。

2018/09/20

nico🐬波待ち中

やっぱり多和田さんの文章好きだな、と夢中になって読んだ。ヨーロッパ留学中に故郷の島国(日本)が消滅してしまった女性Hiruko。自分の祖国も母語も無くなったHirukoは大陸で生き抜くため新しい独自の言語を作る。その逞しさと自由さが清々しい。そして同郷人を探すため大陸を渡り歩くHirukoの強さに感動した。旅の途中で出逢った、国も言語も異なる仲間達との交流もいい。仲間の一人のセリフ「僕らはみんな、一つのボールの上で暮らしている。遠い場所なんてないさ。いつでも会える。何度でも会える」が印象的な心地好い物語。

2018/10/31

KAZOO

本当によく考えられている物語だと感じました。私はこの方の本を読んでいると福永武彦さんや連城三紀彦さんを思い出します。頭のいい方でいらっしゃる感じです。この物語でもヒルコとかスサノオとかいう人物が出てきてむかしの古事記の時代を思い出させてくれます。ある意味国がなくなったりして昔の時代ウィをイメージさせたり言葉というものの発生をイメージされているのかもしれません。考えすぎかもしれませんが非常に楽しめます。

2019/03/15

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