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電気じかけのクジラは歌う

電気じかけのクジラは歌う

電気じかけのクジラは歌う

作家
逸木裕
出版社
講談社
発売日
2019-08-08
ISBN
9784065168189
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電気じかけのクジラは歌う / 感想・レビュー

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みも

現代はPCやスマホから個人の趣味・趣向は限定的に集約され、個人が得たい情報は容易に手に入る。果たしてその先に見えてくる世界はユートピアであろうか。ここに描かれるのは、AIが人間の職業を駆逐する衝撃の近未来。淘汰の主軸は作曲家だが、あらゆる分野のAI増殖は自明の理。つまりこれはある種のディストピア。天才の苦悩や凡人の嫉妬や、その対比も巧妙に描かれ、人間の尊厳や存在意義まで意識させる。心の内奥から沸き上がり、膨れ上がり、巨大な波濤へと変貌する音楽を極上の語彙で展開するその表現力には、息を飲む圧倒的熱量がある。

2019/11/30

mint☆

タイトルと表紙の印象的な絵で手に取った本。人工知能の「jing」がユーザーの好みに合わせて作曲してくれる近未来。作曲家のほとんどが失業。jing検査員の元作曲家、岡部の友人であり数少ない現役作曲家の名塚が自殺した。その名塚の死後、未完の新曲と"指"が岡部の元へ送られてくる。名塚は何故自殺したのか。送られてきたその曲の意味とは。音楽家たちの様々な葛藤が興味深い。大変面白かったですが、少し周りくどい感じがして途中から読み難かったのが残念。でもラストはよかった。20秒の空白の意味がわかったとき胸が熱くなる。

2019/11/06

buchipanda3

人は音楽を生み出す喜びを取り戻せるのか。少し先の時代、AIで音楽創作がなされ作曲という行為が人の手から離れていくという舞台設定の音楽ミステリ長編。今後ありえそうな世界の人間の葛藤とヒリヒリしたドラマを描くのが巧みな作者だけに本作も十分に読み応えがあった。音楽の行方と異才音楽家が残した謎のメッセージが最後まで読み手を牽引。真相が語られる直前、思わず声を上げた。その込められた思いの無垢さが胸に沁みわたる。AIと人間の境目が溶けていく世界でも音楽と人の関わりの普遍性を感じさせる岡部のセリフを反芻し、本を閉じた。

2019/08/11

あも

BGMはドビュッシーの海。AIがリスナーの好みに合った音楽を手軽に作り出す未来。天才作曲家・名塚の自殺を契機に、かつての盟友・岡部は彼の心を探る。鯨の名を冠した人工知能の生みの親を筆頭に外連味ある人々が物語を彩る。作中、音楽の本質は"波及"だと語られる。AIでも作れる音を人の手で作るという無意味な行為の持つ意味。それは否応なく誰かと繋がり波及しゆく僕らの生きる意味に通じている。あなたがただここにいることで、世界は色を変えてまた続いていく。音楽は鳴る。鼓膜の外と心の内で。言葉は響く。誰かと誰かを繋ぐために。

2020/09/25

aquamarine

個人の好みに合わせて作曲をしてくれるAI「Jing」が作曲の殆どを担う時代。作曲家の道をあきらめ、自らJingの検査員となった男の元に、自殺した天才作曲家の名塚から曲の一部が届く。名塚は何のためにこれを送ってきたのか…。人間の作ったAIが人間の作るものを凌駕するという意味、近未来で苦悩する音楽家達の心の叫びを肌で感じるような時間でした。それゆえ逆に主人公に好感が持てなかったのは残念でしたが、ミステリを絡めSFでも読みやすかったです。私はこんな時代が来ても、人間の手で作るものは別のものだと信じたいです。

2019/09/13

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