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大人は泣かないと思っていた (集英社文庫)

大人は泣かないと思っていた (集英社文庫)

大人は泣かないと思っていた (集英社文庫)

作家
寺地はるな
出版社
集英社
発売日
2021-04-20
ISBN
9784087442342
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「大人は泣かないと思っていた (集英社文庫)」のおすすめレビュー

「男らしさ」「女らしさ」の鎖を解き放ち、自分の人生を生きる。心が軽くなる連作短編集『大人は泣かないと思っていた』

『大人は泣かないと思っていた』(寺地はるな/集英社文庫)

「男は仕事、女は家庭」という価値観は、今や昔のものになりつつある。とはいえ、「泣くな、男の子だろう」「女のくせに気が利かないな」と、男らしさ、女らしさの枠に人を押し込めようとする風潮は今なお廃れていない。ジェンダーに限らず、「お兄ちゃんだから我慢できるよね」「いい年なんだから落ち着かなきゃ」など、人は“らしさ”で他人や自分を縛りたがるもの。寺地はるなさんの『大人は泣かないと思っていた』(集英社文庫)は、そんな“らしさ”の鎖から心を軽やかに解き放ってくれる連作短編集だ。

 時田翼は、九州の田舎町で大酒呑みの父とふたりで暮らす32歳の農協職員。趣味は菓子作りだが、父はそんな翼に対し「男のくせに」と苛立ちを隠さない。職場に行けば、大差ない田舎者同士で「おまえんちのほうが田舎」とマウンティングが始まり、宴会では上司が女子にお酌を命じるというプチ地獄。翼も、「九州の男が酒も飲めないとは情けない」となじられる始末だ。だが、こうした翼の日常が、夜の庭に現れた“ゆず泥棒”との出会いで動き出し……。

 そんな第1…

2022/11/19

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大人は泣かないと思っていた (集英社文庫) / 感想・レビュー

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ショースケ

やっぱり寺地さん好きだなぁ。優しい表現でぐいぐい心持っていかれる。九州の田舎町で育った時田翼32歳独身。朝から晩まで酒を飲む父と2人暮らし。口うるさい隣の婆さんとたった二軒の超田舎。農協に勤務し、職場の人たちから自分たちも田舎町なのに翼の所よりはマシと変なプライドを持たれる。趣味はお菓子作り。男のくせにナヨナヨしていると父からは文句を言われる。でも翼くん好きだな。優しくて酒の席の女子のお酌の決まりをなくす夢がある。隣の孫、出て行った母、友達の鉄矢、昭和の塊の職場の父親などの観点から章が成り立つ。優しい本!

2023/02/19

エドワード

九州の田舎の肘差村。合併して耳中市肘差になっても、他人の噂を娯楽として消費する<九州男児>の村は相変わらず。酒飲みの父と二人暮らしの農協職員、時田翼。隣家に住む祖母の世話をする小柳レモン。翼の同僚、平野さんや飯盛君、翼の親友、鉄也。先の見えない不安を抱えながら精一杯生きている。優しいよね。気を使い過ぎるよね。やっぱり世間が狭いからかね。人は誰かのために生まれてきたわけじゃない。だけど、一緒にいられたら嬉しいよね。私も子供の頃、大人は泣かないと思っていた。自分が大人になったらそんなのウソだとよくわかったよ。

2021/06/27

mariya926

色々な立場の人の物語が凝縮しています。特に主人公は周りの人に色々と言われて傷ついていますが、それでも一歩一歩自分の道を歩み、自分の言葉で語っているのが凄いです。時に頑固にも自分の道を行こうとする時に、さり気なく周りの人が助けてくれる。それも主人公の生き方に共感しているからだと思います。玲子さんの短編を読みながら、私も1歩間違えば離婚していたのかも?と思いました。離婚した家族、再婚した家族、昔ながらの家、結婚して家を出たい人、同棲を解消した人などなど『それなりに幸せな瞬間はあるんだよ』というのが結論かな?

2021/09/21

hiace9000

九州の田舎で父親と二人暮らし。JA職員の時田翼32歳の自宅に不審なゆず泥棒が? ここから始まる物語。ひょんな出会いから始まるーなんて王道恋愛小説かと思いきや、そこは他と一線を画す、ザ・寺地作品。ドラマ仕立ての7連作短編は一話ごと読み手に色んなものを投げかけ、それを投げ返させる、まるで自分との対話のようにも思えて。当たり前とされて来たことの不自然さや理不尽さ、常識に安住し依存して無理を通す甘えや幼さにもピシャリと×を突きつける。自分らしさの本質って?その答は、是非素敵な登場人物達とともに考え見つけてほしい。

2022/12/14

黒瀬 木綿希(ゆうき)

大人になればなんでも出来るようになると思っていた。ある日を境に強くなると思っていた。実際は歳だけを重ねたーー 昔ながらの風習。男は、女は、こうあるべきだという鎖。それを自ら断ち切り、反対にがんじがらめに絡め取られ進むことも退くことも出来なくなった人たちを丹念に描いた連作短編。間近で起きている日常はそれぞれが選んだ膨大な選択肢の果て。決してドラマチックではないが、だからこそ伝わるリアリティがある。人生の岐路に立たされた人の指針となるような物語でした。

2021/05/14

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