こまどりたちが歌うなら
「こまどりたちが歌うなら」のおすすめレビュー
寺地はるな最新作 舞台は小さな製菓会社。正社員とパート――仕事を通して人間関係が赤裸々に描かれる『こまどりたちが歌うなら』
『こまどりたちが歌うなら』(寺地はるな/集英社)
対人関係で悩む時、いつも同じことを思う。この人が“悪”の成分100%の人間だったら、どれほど楽だろう、と。好きな部分も、よき思い出も、嫌いになりきれない要素もある。その中で、それでもどうしても“しんどい”と感じる側面がある時に、相手との関係に悩むのだ。「あいつは悪人だ」と言い切れる人が相手なら、誰しもこんなに悩まない。
寺地はるな氏による新著『こまどりたちが歌うなら』(集英社)は、善人でも悪人でもない人間同士だからこそ生まれる葛藤と軋轢が描かれている。主人公の小松茉子(まこ)は、前職の職場環境や人間関係に疲れ果て、親戚が営む製菓会社に転職した。茉子が入社した吉成製菓は社員35名の小さな会社で、饅頭「こまどりのうた」や小ぶりな大福「はばたき」などの和菓子の製造・販売を手がけている。単に親戚のツテがあったというだけでなく、茉子には吉成製菓への思い入れがあった。
“涙はしょっぱい、お菓子は甘い。”
幼い頃、祖父の葬儀で泣いていた茉子に、とある親戚が「こまどりのうた」を差し出しながらそう呟いた。この思い出が…
2024/3/26
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こまどりたちが歌うなら / 感想・レビュー
いつでも母さん
正論がいつもその場に相応しいとは断言できない。その場を穏便に済ませるだけが正解でもないけれど。生きてる限り人間関係は難しい。ましてや初対面の人との関わり、初めての環境ではなかなか思ったことは言えない。私自身何度も苦い思いをして(多分させたりも・・)体と心の両方で学んできたのだと思う。寺地さんはそこんトコロを常に巧みに擽る。それぞれの行違う心の声と、出会うべくして出会う気持ちの妙が刺さる。だからといって今回の主人公・茉子に諸手を上げて共感できるかは別の話で。和菓子と善哉の存在が好くて最後まで読み切った。
2024/04/22
starbro
寺地 はるなは、新作中心に読んでいる作家です。山本周五郎賞候補作ということで読みました。同族企業の濃密な人間関係の中での物語、良作ではありますが、山本周五郎賞受賞するほどのパワーは感じられませんでした。 https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-771864-5
2024/04/26
シナモン
社会のなかで自分の声をあげていくのは大変なこと。だけど黙っていたら何も変わらない。ここにいるよ!と鳴いているこまどりに励まされる一冊でした。
2024/04/23
ゆみねこ
親戚が営む製菓会社に転職した小松茉子。5歳上でハトコの伸吾は父の跡を継いで社長に就任したばかり。頼りない伸吾、理由あってパートとして長年働いているぶっきらぼうな亀田さん。パワハラ上司の江島と怒られてばかりの部下の正置。会社の古いルールを変えようと奮闘する茉子にも、前職での苦い失敗が。声をあげないと分かってもらえない。働く人たちへのメッセージ小説と受け止めた。
2024/04/19
もぐもぐ
勤務先で人間関係がしんどくなり親戚の小さな製菓会社に転職した茉子。社内の見えないルールや古い就業規則はよく見た景色でちょっとうんざり。”自分の正義に正直に生きる”茉子の気持ちは良く分かるけど、人間関係は正論では片付かないから難しいですね。でも読み進めるにつれて茉子を始め悩みひたむきに生きる皆が愛おしくなってました。心に残る言葉もいっぱいでとても良かったです。ほんと同一労働同一賃金ってどこ行っちゃったんですかね。
2024/04/06
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