KADOKAWA Group

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

泳ぐのに、安全でも適切でもありません (集英社文庫)

泳ぐのに、安全でも適切でもありません (集英社文庫)

泳ぐのに、安全でも適切でもありません (集英社文庫)

作家
江國香織
出版社
集英社
発売日
2005-02-18
ISBN
9784087477856
amazonで購入する

「泳ぐのに、安全でも適切でもありません (集英社文庫)」のおすすめレビュー

『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』を読んで、やさしく漂わせてくれる海を知る

『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』(江國香織/集英社)

 小説は、ときに私たちの夜をゆったりとほぐしてくれる。

 日中に歩く街の喧騒、次から次へと届くメール、謝りたくないけど謝る時間……そんなふだんの自分や騒がしさを、小説を読むあいだだけは、忘れられる。

「泳ぐのに、安全でも適切でもありません。 私たちみんなの人生に、立てておいてほしい看板ではないか。」(『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』より)

 夜ひとりでいるとき、騒がしくて忙しい人生についてこんな言葉をくれるのは、小説だけだ。と、私は思う。

 江國香織さんの『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』(集英社)という短編小説集は、根無し草の女たちの恋愛――底なしの海とでもいうべき人生を送るひとびとの物語だ。でも登場人物のシビアな境遇とは裏腹に、小説の読後感はまるで潮の香りをかぎながら味わうウイスキーのように、じんわりと泣きたくなる。

 たとえば表題作。母と娘ふたりが海辺のレストランで食事する場面が描かれる。彼女たちが食べるオニオンリングや白ワインは、小説を読む私のお腹すらぐうぐうと鳴らすくらい…

2019/5/17

全文を読む

おすすめレビューをもっと見る

泳ぐのに、安全でも適切でもありません (集英社文庫) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

ヴェネツィア

著者がアメリカ旅行中に見た看板に触発されて書かれた物語。"No swimming"ではないけれど、それは婉曲に止めておくことを促す"It' not safe or suitable to swim”.ここに収録された10の短篇はいずれも、それを「躊躇わなかった」女たちを描く。彼女たちはけっして大胆という訳ではない。また決意というほどのものがあった訳でもない。それをいとも自然に踏み越えて行ったがゆえに、小説に成り得たのだ。孤独の影(あくまでも影だ)を背負い、物語の背後からは一抹の寂寥感が漂う。

2018/09/12

❁かな❁

泳ぐのに、安全でも適切でもない人生。その中で愛に躊躇わない女性たちの短編集。江國さんらしい作品。静かで美しい空気感、大人の女性、2人の濃密な時間などずっとこの世界に浸っていたくなる。お気に入りのお話は表題作と「うんとお腹をすかせてきてね」「サマーブランケット」江國さんがあとがきに書かれてた言葉も印象的。「瞬間の集積が時間であり、時間の集積が人生であるならば、私はやっぱり瞬間を信じたい」瞬間の気持ちは大事。素敵な瞬間はいつまでも記憶から消えない。山田詠美さんの解説も素敵。山本周五郎賞受賞作。

2020/05/07

夢追人009

江國香織さんが著し山本周五郎賞を獲得した男と女の愛の物語10編の秀作短編集です。本書を読んで思いついたのは、この10編を元にしてフォークソングの達人の方々にイメージを膨らませた歌を書いてもらったら1枚のアルバムとして面白い物が出来そうだなという贅沢な夢みたいなアイディアでしたね。演歌歌手ではなくフォークシンガーにさまざまな人生の愛の歌をこしらえて欲しいですよね。シングル同士の熱愛はよいとして妻子ある男との不倫や、ろくでなし男との腐れ縁の愛でもどんなに安全ではなくとも女は後悔せずに一途に愛するのでしょうね。

2019/12/25

エドワード

この短編集の主人公達は皆「泳ぐのに安全でも適切でもない」所に飛び込む。これこそ江國香織の物語のエッセンスだ。彼らは野蛮だ。欲望に忠実だ。人生が安全で適切であれば面白くも何ともないと物語は教えてくれる。「うんとお腹をすかせてきてね」にある言葉<あたしたちは毎晩一緒にごはんを食べる。あたしたちの身体はもうかなりおなじものでできているはずだ。>この気分は私自身感じたことがある。このような感覚をたくさん共有できる江國香織の表現は見事。また読みたくなる。

2011/06/28

ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中

満たされてどこにも行けない。横にひとがいても、それが愛するひとであっても、たまにぞっと絶望するような。いきづまっているいるような。でも同時にこのまま死んでしまってもいいほど幸福なような。自分の生活のなかでもふと感じる感覚が表現されている感覚。寂しいんだけど満たされて、わたしまで浮遊する。 サマーブランケットをまた読みたくて再読。満たされていて生きるのに不安もなくて、ただ絶望的に寂しくて自由な鎌倉の海での生活。何にも縛られない余裕のある生活は憧れて、でも彼女の生活は「幸福」ではないのだ、とも同時におもう。

2020/06/28

感想・レビューをもっと見る