文章から伝わる「世界の美しさ」に、元気をもらおう。『物語のなかとそと』/佐藤日向の#砂糖図書館⑯
私は学生時代、国語のテストの読解問題に登場する物語が楽しみだった。 長編の一部が抜粋される時もあれば、短編が出題される時もあり、続きが気になるなぁと思いながらもそこで別れてしまった物語もあれば、続きを授業で読んだこともあった。 授業で出逢った物語達は、自分で選んだ作品じゃない分、今も私の中で色濃く残っているのだと思う。 中でも、心に残った短編の作品がひとつあり、初めて先生に作家さんの名前を聞きに行った。 今回は、私にとって思い出深い、江國香織さんの「物語のなかとそと」という散文集を紹介したいと思う。 本書は「書くこと」「読むこと」「その周辺」の三つのパートに分かれていて、 短編とエッセイが入り混じっているため、不思議な感覚にとらわれる。 まず1ページ目を開いて「あぁ、これはあの時先生に聞きに行った、江國香織さんの作品だ」と気づいた瞬間、ワクワクが止まらなかった。 江國さんが紡ぐ文章はとてもみずみずしくて、文字達を目で摂取することで身体が元気になっていくような感覚になる。散文集…